「獣の奏者エリン」浜名孝行監督コンテ回の特徴について


 「獣の奏者エリン」の監督である浜名孝行さんのコンテ回の特徴を第15話「ふたりの過去」、第21話「消えそうな光」を題材にして書いていく。


 浜名孝行監督のコンテ回では、人物の心理やその時の状況や未来への暗示などを隠喩したカットを他のスタッフよりも顕著に使用する。








第15話「ふたりの過去」 コンテ・浜名孝行 演出・齋藤昭裕 布施木一喜


・共に生活してきたジョウンとエリン。しかし、二人に別れの時が訪れる。その別れを予感させるものとして「二匹の青い小鳥」を使って表現している。






別々の方向に飛び立っていく「二匹の青い小鳥」=「ジョウンとエリン」が別々の未来へと進んでいく。






・ジョウンとエリン、そしてジョウンの実の息子アサンとの今後の行く末についての会話シーンが終わり、その直後に「カメ」と「カモ」の動物達の親子連れが描写される。「ジョウンとアサン」、「ジョウンとエリン」の親子関係をより印象的に仕上げている。







・ジョウンの過去の挿話で自分が追放された経緯を語っている途中に、急に年老いた「狼」が森の中に入っていく様が描写される。とても優秀で王都の高等学舎で教導師長にまで昇りつめたジョウンだったが、とある事件の責任を負う形になり、高等学舎を追放されることになる。追放され王都を去るジョウンの隠喩として、森の中へ入っていく年老いた「狼」が描写されている。






・ジョウンと別れ、エリンが自分の未来を決断する場面。そこで挿入される、とまっていた木から飛び立ち大空へと舞っていく「鳥」。新しい未来へ突き進んでいくエリンを象徴するものになっている。



「とまっていた木」=「ジョウンとの生活」から、新たに飛び立つ。





「大空を飛んでいく」=「未来へ突き進むエリン」。







第21話「消えそうな光」 コンテ・浜名孝行 演出・齋藤昭裕 布施木一喜

傷ついた王獣の仔・リラン。リランは親と離れ離れにされたことと矢で傷つけられたことから、自分の殻の中へ閉じこもっている。それを隠喩しているのが度々登場する「かたつむり」。自分の殻に閉じこもっているリランを殻の中に引っ込んでいる「かたつむり」で表現している。


「殻に閉じこもるリラン」=「殻の中に入っているかたつむり」。








エリンのアイデアにより、リランは元気を取り戻そうになり、自分の殻を破ることになる。ここで、かたつむりが殻の中から姿を現す。自分の殻を破るリランを殻から出てくるかたつむりで表現している。リランとかたつむりに差し込む光も印象的。








起き上がり、殻を破るリラン。














浜名孝行監督は、動物などの生き物を使っての隠喩を多用する(布施木一喜さんよりも顕著)。これを使用することによって、視聴者は視覚的に人物の心理やその時の状況をイメージしやすくなっている。節約も兼ねている効果的な手法だと思う。取り上げた第15話・第21話の他にも第8話「蜂飼いのジョウン」(コンテ・浜名孝行 演出・齋藤昭裕 布施木一喜)なども浜名監督の特徴が出ている。






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