青い花 第7話「若葉のころ」が面白い

井汲京子


 第7話は、あきらが康(井汲の許嫁)の車で家まで送ってもらうシーンから始まる。あきらと康の顔は描写されるのだが、井汲の顔がなかなか描写されない。康が井汲に話しかけるとやっと映し出される、若干仰角から捉えられ、窓の外をじっと見つめている姿が描写される。次に井汲の両目のクローズアップショットに切り替わる(図1)。この一連の流れが印象的で、井汲があきらと康とはまるで別の世界にいるような程、両者の隔たりを強調させるカットの繋がりになっている。クローズアップで捉えられた目はどこか遠くを、康達とは全然違う場所を見つめている。まったくもって康の事なんかどうでもよくて、杉本が泣いたことにしか興味のない井汲の姿をよく表している。

井汲の頭の中は、ほとんど杉本で、康のことなんてホント頭の隅っこぐらいにしかないんだろうな・・。
図1


二面性


 ふみのサボりに付き合うあきら。ふみといるあきらはなぜこんなにも頼もしくて、大人っぽいのだろうか? 廊下を走って、シスターに怒られるという、小学生みたいなことを平気でやってのける人物なのに。それは、ふみにも同じことが言える。あきらよりも恋愛に関しては進んでいて大人な一面も持ち合わせているのに、あきらと一緒にいるときは子供みたいな振る舞いをするふみ。杉本も後輩やふみの前では、かっこよくて憧れの先輩なわけなのだが、各務先生や杉本四姉妹の前では、だだをこねる子供同然になってしまう。井汲も康やあきらの前では、高校生とは思えない大人らしい態度なのだが、杉本の前に出ると、ごくごく普通の同年代の女の子と何ら遜色のない感じになってしまう。

 青い花の主要人物は二面性というか、一通りの見方では推し量れないものを持っている。一面だけでなく、多様な面があることによって、人物の魅力が増幅されているように感じる。まあ、それが普通の人間なんだけど・・。

 強い所もあれば、弱い所もある。特に杉本の普段とは違う面が垣間見えたのが、この第7話。それについて、下の段で書いていきたいと思います。


メール


 携帯電話のメールをうまく使っているなぁと久しぶりに思ったシーン。メールって普及しまくってるのに、案外アニメ作品にはあまり取り入れられていなかったりする(もちろん、うまく取り入れている作品もある)。バスケをする杉本とふみのメールを交互に紡ぎ、やわらかなピアノと共にモンタージュ・シークェンスで見せていく(図2)。個人的には今回すごく好きなシーン。
図2



 杉本姉妹と母親の前で、ふみと付き合ってると告げる恭己。杉本四姉妹の三女である公理に付き合ってることを追及される。言葉によって厳しく追及されるというより、公理の「目」によって追い立てられているという方が当てはまっているように感じる。ここでは、公理の目のクローズアップと恭己の目のクローズアップの応酬が繰り広げられる。公理は、決して目を逸らさずに恭己一点だけを見つめ続け、淡々と話し続ける。恭己も公理を睨みつけるようにして、公理を見続ける(図3)。しかし、「本当に今好きな人は、そのお嬢さんなのね」と公理が言い放った瞬間、恭己は思わず目を逸らしてしまう(図4)。それを見逃さなかった公理は、「じゃあ、恭己はバイセクシャルなんだわ」とたたみかける。恭己は頬を赤らめ、公理を見ることをやめて、部屋を出て行ってしまう。
図3

図4

図5


 この一連の流れは、恭己の弱い部分が如実に出た所であり(初めてなのかもしれない)、それを目線によってうまく表現したところでもある。公理の「全く目を逸らさずに見つめ続ける=揺るがない態度」、恭己の「目を逸らす=揺らいでる心、見つめ続ける事をやめる=逃げる」。台詞だけでなく、目線のやりとりで、恭己の心理の変化を明瞭に表していた。

 その後、恭己はこれまた醜態をさらし続けてしまうわけですが(いろいろと)・・・。公理とのやりとりをずっと引きずるのは、それほどショックだったのでしょうな・・・。


 第7話のラスト。杉本の台詞の「今のままじゃ、付き合えない」が終わり、このショット(図6)。画面右(上手)にふみ、画面左(下手)に杉本。前の日記(こちらを参照して下さい)で書きましたが、下手には弱い印象、上手には強い印象を与える効果があり、下手にいてソファーに頭上半分以外まるまる隠れてしまっている杉本はいつもと違いどこか力無さげで、弱い印象を与えている。画面右のふみとは違い、画面左には影がかかっており、これまた杉本に暗い印象・弱い印象を与えている。今までのかっこよくて頼れる先輩という強いイメージから、このショットでは杉本に弱いイメージを与えており、現在の杉本の状態をよく表現している。

 杉本の弱い一面というか、今までとは違う一面を表したショットの後に、豪雨が描写されるので二人の心情を察するのにはわかりやすい。
図6


おまけ


 電車の中に誰もいない。時間帯を考えると、いないのは普通なのかもしれないが(?)、ふみとあきらの二人だけの世界って感じがする。あきらの「あんりゃま」(この発音でいいのか?)が良かった。おじさんか?

おまけ2


 これは、女性でも、男性でも関係なく惚れてまうやろ。なんだ、このポーズは。