ささめきこと 第1話「ささめきこと」が面白い


 急いで書いたので、後で加筆・修正するかも。



視線を送ること、盗視すること

 アバン、村雨純夏と風間汐は、教室でキスをしている二人の女子生徒を思わず目撃してしまう。純夏と汐は咄嗟に扉の影に隠れる。そこで、汐の手が純夏の手に触れる。教室でキスをしている女子生徒達を見ている汐。その横で汐に視線を送る純夏をクロースアップで捉える。純夏は、汐を盗み見る、盗視する。この相手に知られることのない一方的に注がれる視線が第1話の主題となっていると思う。第1話では、一方的に送られる視線、盗視する行為が頻出する。Aパート、図書室で本の受付をしている汐と先輩。汐の瞳のクロースアップショットと受付をしている先輩が交互に映し出される(図1)。ここで汐は、隣にいる先輩を盗み見る・先輩に視線を送っている。そして、先輩と汐が会話している様子を盗視する純夏(図2)。この頻繁に描かれる盗み見る行為、これは何なのかと言うと、相手への好意、決して言葉には出させない、相手には知られてはいけない想いの表れ。「ささめきこと」第1話では、女の子が女の子を好きになるという周りには大っぴらには出せない、相手に知られてしまうといけない、隠さなくてはいけない想いを「盗視する行為」で表現していく。一方的且つ相手には知られてはいけないので、視線を送る相手と視線が交差することはない、ただ隠れて視線を送るだけだ。彼女たちに許されている、出来る範囲のことと言えば、相手を盗み見ることしかできない。「好き」という言葉は発せられることはなく、ただ相手を「見る」。一貫として相手に伝わらない視線を送る行為だけで登場人物の「片想い」の心情を描いていく。


 「好き」が言えない・隠さなければいけないという言葉を抑制した状況で、いかに相手への好意を表現していくかを「ささめきこと」第1話では「盗視するという行為」で表現していく。

図1

図2




 Bパート、放課後の図書室での汐と先輩のシーン。ここでも、汐は先輩に見つからないように盗み見て視線を送る。しかし、その想いは届くことはない。自分の好きな人を汐に取られてしまった(厳密には取ってはいないが勝手に惚れられているだけ)先輩から送られてきたのは、怒りに満ちた憎しみの視線だった(図3)。先輩からの好意の視線が送られることはなかった。

図3



 Bパートラスト、昼休みで弁当を食べる純夏、汐、きよりの三人組。会話中、超クロースアップで捉えられた純夏の片目から涙がこぼれる(図4)。それは前日に汐からずっと友達でいてねと告げられたことからくる涙だった。純夏は汐を盗視しながら涙を流す。それは、言葉には出せない、好きな人に視線を送ることしかできない中での涙。好きなのに好きと言えないもどかしい気持ち、その悲しみやもどかしさを視線を送るということで一貫として描いていく。

図4



 「視線」というものがこの第1話では重要で、それは身体の接触よりも上位にくるものではないのかとも思う。Bパート、クレープを食べながら月夜を歩く純夏と汐。ここで二人は手を握り、手を絡みあわせる(図5)。この描写を見ると、二人の心・想いは通じ合っているのかと感じる。顔を赤く染めた純夏と汐が描写されると尚更そう感じてしまう。しかし、汐の口から出たのは「ずっと友達でいてね」という言葉。その言葉を浴びた純夏のショックは背景が無くなり全ての色彩が真っ白になるほどだ(図6)。お互いが手を絡み合わせた濃厚な身体の接触は、二人の想いを通じあわせるものではなかった。ここでは、二人は視線を交差させていない、互いを見つめ合ってはいないのだ。想いを通じ合わせるには、互いが見つめ合う、視線を交差させなくてはいけない。視線を交差させる、見つめ合わなければ想いが通じ合わないのではないのか。画面右斜め上には満月、画面左斜め下には顔上半分だけが映し出されている純夏のショットは、顔が切り取られて不均衡になっており、その不均衡さから、不安感や虚しさが伝わり、純夏の悲しみが浮かび上がってくるように思える(図7)。


 では、手の接触は全くの無意味かというと、そういうわけでもなく。Cパートを観る限り、互いの距離は確実に縮まっていて、心は接近している。手を重ねるだけでは駄目で、互いが見つめ合い、身体を接触させる時こそ、お互いの心・想いが本当に繋ぎ合うのではないのかなと思った。

図5

図6

図7



 今後、汐と純夏の関係がどう変わっていくのかが気になる。



モヤモヤ


 Aパート、帰宅して部屋で本を読む純夏。寝転がって本を読むのだが、照明の光が邪魔でよく読めない。眉間にしわをよせる純夏。そこに純夏と汐が写っている写真のショットが挿入される。このうまく本が読めないというシークェンスは、図書室で先輩と汐が仲良くしている様子を盗み見て、悶々としている純夏を端的に表したもので、先輩と汐の仲の良い様子を見た苛立ちと光が邪魔でよく読めない苛立ちとが直結している。


 悶々として苛立つ純夏の心情を照明の光が邪魔でよく読めないということでうまく表している。




反復


 授業が終わり昼休みに入って、教師を押しのけて昼食を買いにいく生徒。

 外で弁当を食べる純夏達。

 彼女たちの日常、シチュエーションは繰り返される。この反復されるシチュエーションは、彼女たちの関係の変化をうまくうつしだしている。繰り返される同質の日常なのだが、そこには彼女たちの心情の変化があり、同じ舞台・設定がその変化をより際立たせている。特に三回繰り返される外での三人の昼食は、彼女たちの変化していく関係を全く同じシチュエーションを使い効果的に表現している。




おまけ


 タコを使ったところか、他にも細かい所まで色々見所があった。