『花咲くいろは』第10話「微熱」のメモ


 「なんだか今回の話変だな」と思いながら視聴していた。こういうまわりくどい話の見せ方を今まで『花咲くいろは』はしなかったような気が。いつもはもっとストレートな感じなんだけどなぁと思っていたら、西村純二監督の脚本だった。職業監督の時と自分の我を出すときがきっぱりと分かれている。篠原俊哉さんのコンテもよかった。「あの花」を見てから篠原俊哉さんと吉村愛さんがすごく気になる(何回も二人が参加した回は見てきているんだけど)。



今回のエピソードで、緒花が今や喜翠荘のみんなに必要とされていること、みんなが緒花のお見舞いに来ることから皆に愛されていることがよくわかる。そして、最後に緒花は、喜翠荘にいることを選択するのだ。



 今回特徴的なのが、回想を挟みながら進むところ。普通なら、「これは、回想ですよ」という状況設定のショットが用意されているものだが、それがなかったりする。そのため、回想を現実のようにとらえてしまう。例えば、緒花が自室のベッドで寝込んでいると、テレビで「ホテルの王様」というドラマが始まる(喜翠荘との対比だろう)。ドラマの中で携帯電話のアラームが鳴りだし、それが現実のアラームとシンクロし始め、場面は早朝へと切り替わる。最初、これが回想だとはわからず、現在のものだと判断してしまうが、後にこれが回想だとわかる。


 この移行の仕方は、「回想なのか、現在なのか」という視聴者の判断を遅延させ、思考を混乱させる。意図的な思考の混乱は、風邪で弱り頭がボーとする緒花と視聴者を同期させる役割を果たす。



 鏡の使われ方も面白い(自室での緒花と徹のシークエンス、緒花の元に菜子が訪ねてくるシークエンスの二箇所で使われる)。

 切り返しで互いの顔を見せるのではなく、鏡を使用し同時並行で緒花と徹の二人の顔を同一フレームの中に収める。横から捉えて二人をフレームの中に収めるのもいいけど、こっちの方がいい。緒花のリアクションにどぎまぎする徹の表情がよりダイレクトに見える。



 苺とくちびるをセットにする見せ方。「緒花のくちびるが甘酸っぱい」という連想をさせる。徹もそう思ったのかな。



 緒花を心配する徹に対して、やきもちを焼く民子の姿がかわいらしい。嫉妬の炎なのか(魚を焼く所)? つっても、この段階では民子はやきもち焼いていないんだけどね。



 この食べ物ってなんですか? 説明ありました? 「いつもこれ」って・・・。ゼリーっすか? 気になる・・。



 物語から独立したTVの点けたり/消したり。第10話のいいアクセントになっている。TVが点いてない、TVが点いているで時間の流れが明確にもなっている。



ラストの涙良いな。喜翠荘に残ることを選択し、戻らないと決断する。