『境界の彼方』について 


 待ちに待った石立太一さんの初監督作品である。キャラデザは、門脇未来さんだ。


 京アニにとって、アクション物の作品は少ない。『フルメタル・パニック! The Second Raid』でのロボットバトルアクションや『MUNTO』でのファンタジーバトル、最近で云えば『中二病でも恋がしたい!』での中二病ワールドでのバトルアクションぐらいだ。

 
 本格的な学園異能バトルアクションは、今作が初めてであり、どんなアクションを見せてくれるのか期待していた。


 今年の京アニの3作品中、2作品は初監督作品だ(『Free!』の内海紘子監督)。京アニにとって今年は、監督を務めることが出来る人物を育てていこうという年なのかもしれない。京アニのエース監督になるはずであった山本寛さんはとっくの昔に退社し、山本寛さんと同等かそれ以上の演出センスを持った高雄統子さんも退社し、米田光良さんも、坂本一也さんももういないのだ。


 それならば、これからの京アニを背負って立つ人物は、一体誰なのか? 

 石立太一さん以外にいないじゃないか!! 


 ・・・とファンの僕は勝手に思うのだった。



 それで、作品を視聴した感想は、素直に面白かったです。


 ストーリーや設定は、何か目新しいものがあるわけじゃなく、強く惹かれるものは今のところなかった。でも、京アニのアニメーションによって、魅力的な作品に仕上がっている。おそらく、他の制作会社が制作していたら、凡百の作品になっていただろう。


 視聴して感じたことをいくつか。


 バトルアクションを見てまず初めに思ったことが、栗山未来の動きである。観ていて、不思議な感覚だった。栗山未来は、異界士であり、常人離れした身体能力を持っている。それは、自分の背丈以上の金網フェンスを余裕で飛び越え、壁もなんなく壊すほどの力なのだが、その超人的な能力の割りに、やけに女の子らしい動作なのだ。内股で腰を落とし、手の所作や佇まいなど、運動が出来ないごくごく普通の高校生の女の子みたいな所作をする。ちょっと大きめのカーディガンも女の子っぼさに拍車をかける。前期に『とある科学の超電磁砲S』が放送していたが、そこで繰り広げられる少女たちの超能力バトルアクションとはまったく別の発想だ。『とある科学の超電磁砲S』での美琴たちのアクションは、ここまで女の子らしさは出ていない。女の子らしさを出すことはバトルアクションには必要はないと思うのだが、今作の方がより女の子が戦っているという感覚が強い。ここまで、少女が戦っているというアクションは見たことがないような気がする。超人的な力とか弱い少女とのアンビバレスなバトルアクションはちょっと新鮮だった。




 第1話の校舎においての移動しながらのアクションシーンも見ごたえがあった。物が飛んできたら目をつぶったり、激しい動作で眼鏡が外れそうになったり、揺れる髪の毛や服とか、バランスを崩した状態で着地したらどうなるかとか、細部まで考えられたアクションになっている。それに加え、ストップモーションを随所に取り入れた緩急があるアクションにもなっている。カメラワークも多彩で、どこぞの平面的なアクションではなく、ちゃんと奥行きを感じさせるアクションになっている。だからなのか、ちょっと見にくいアクションでもある。


 会話シーンなどの日常シーンも石立太一監督らしいものだった。俯瞰気味のちょっとカメラが引いたショットや凝ったアングルのショットなどなど。石立太一演出回っていう感じ。公園での会話シーンも良かった。話の核心に近づくと、桜の花びらが風に舞い、彼と彼女の間に舞い落ちる。無数のゆらゆらと落ちる桜の花びらは、妖夢に対して揺れる彼女の心情を表す。




 石立太一さんと門脇未来さんが作り上げたOPも素晴らしかった(アクションシーンのエフェクトがこれまた良い)。栗山未来が物語の舞台である長月市花野町に越してくるという内容(だと思う)。朝から夜へと時間は流れる。孤独な少女(栗山未来)は、希望(神原秋人)と出会うのだ。並んで咲く赤と白の花は、未来と秋人のことだろう。




 水面に反射して映る月は、まるで異界師である未来と半妖の秋人を表しているかのようだ(空と海の境界線は、人間と妖夢の境界線)。




 これからも、『境界の彼方』についてちょくちょく書いていきたいと思います(第2話も面白かったです。ラストの牛丼店での鏡を使った会話シーンとか。それは、また次に書きます)