『アイドルマスター』第20話「約束」のメモ


 気になったので短めにメモ。



 脚本/土屋理敬、コンテ/高雄統子、演出/原田孝宏、作監/松尾祐輔

 高雄統子さんらしい緻密なカット割りと画面構成だった。
 


 夕暮れや夜や閉め切った部屋などの場面が多く、明るい場面は少ない。どこか暗い印象を受ける。他の回よりも陰影を強調した画面設計になっており、それは千早の心理的陰影にも繋がってくる。


 ロングショットなど、カメラが引いて人物たちの心理的陰影や沈鬱さをあらわしている所も多かった。





 本編中2回ある千早の自宅マンションにおける千早と春香のやりとりが見事だった。


 1回目。


 玄関前で春香はインターホン越しに千早と会話する。千早を励まそうとする春香とそれを拒絶する千早。互いに別の空間にいるのだが、画面左側を向いている春香と画面右側を向いている千早という構成のため、まるで二人は向き合って会話しているかのように映し出される。春香を横から捉えたバストショットは何回も反復され、会話を重ねていくうちに画面中央にいた春香が徐々に画面左側へ寄って行き、千早も画面右側へと寄っていく。会話が深まっていくにつれ、二人は接近していき、カメラも寄っていく。春香が千早に心理的に接近しようとすることを映像的にあらわす。春香は、再び歌うようにと励ますのだが、千早は頑なに拒絶し、「おせっかいはやめて」と云って春香を遠ざける。今まで接近していたカメラは引いて、ショックを受けた春香を映す。




 2回目。


 みんなで作った曲を携えて、春香は千早に会いに行く。


 水道から滴る水の音と部屋で一人蹲る千早を捉えた約20秒間の1ショットは、印象的だ。本作にしては珍しいちょっと長めの1ショット。そのショットの持続時間から、千早の孤絶感が伝わってくる。



 ここで見事だなと思ったのは、マンションシーン1回目の横で向き合った構成ではなく、別の構成が取られていること。横ではなく、千早と春香を正面から捉えて映し出す。


 春香の千早に対する強い想いを正面から捉えて、強く表現する。それを受けて、千早も正面から捉える。


 春香の強い想いとその想いが届いた千早を表現するために、1回目は正面からの構図を避けて、2回目のここぞという時に使用する。効果的な見せ方だなと感じた。




 そして、このシーンのラスト。夕空から夜空へとちょうど変わる美しい空が映し出される。清々しくて、暗雲が消え去ったような爽快感が残る1ショット。前述したように暗かった場面が多かったのだが、ここから一転して明るくなっていく。

 千早の心理的推移を反映して、画面が明るくなっていく。




 千早が「約束」を歌う所。まるで子供の頃に戻ったように千早は、口を大きく開けて、白い歯を見せて、楽しそうに嬉しそうに歌う。千早が楽しそうに歌っていた子供の頃を表現するために、白い歯と大きな口を使ってあらわす。




 良き回でした。回を重ねるごとに『アイドルマスター』は面白くなっているなぁと最近思う。