School Days、Myself;Yourself、true tears、痛みを伴う物語の系譜

恋愛ゲームのアニメ化作品の大概は、自分の欲望を具現化できる理想的な物だったのに対して、この三作品は真逆のことをやってのけたと思う。それは、現実感溢れる等身大の痛みを視聴者に押し付けたということ。近年急激に増えた恋愛ゲーム原作のアニメ作品、そこではとびっきりの可愛らしい女の子が主人公に次々と惚れていき、めくるめく甘い日々を疑似体験できる。まさにファンタジーともいえる理想的な物語だ。現実世界の恋愛から脱出し、心地よい世界に浸れる物だった。学生時代味わえなかった恋愛をそこに求めていたのかもしれない。

そんな中、突然変異ともいえる作品群が誕生した。可愛い女の子達と恋愛できるんだろうなと思い、視聴してみたら、いきなりナイフで刺されたかのような痛みが全身に走った。その痛みは、自分が学生時代に味わった苦い体験に似たものだった。それは誰かに対する激しい嫉妬だったり、自分の優柔不断ぶりだったり、他人を傷つけたり、焦りや葛藤、嘘や自己保身、誰にも言えないトラウマなど、人が持つ負の側面を写しだした痛みだった。まさか恋愛アニメで自分が傷つけられるとも思ってなかったので、激しく拒絶し、見てると鬱になる、鬱アニメだと決め付けた。

しかし、本当にそう決め付けて良かったのかと思う? 見てると嫌な気分になるから、拒絶してよかったのか? 猟奇的な面や修羅場等が取り立たされるが、恋愛ゲームのアニメ化という枠組みの中で、等身大の高校生の悩みや痛みを表現しようとした、意義のあるアニメ作品達ではないだろうか。確かにツッコミたくなるような点は多々あるが、それでも魅力ある作品に違いないと思う。今回のtrue tearsでこのジャンルが確立したと私は勝手に思ってる。眞一郎の優柔不断さや常に悩んで葛藤していているところ、比呂美の他人のことを考えない自分勝手な一面、乃絵の一途な気持ちゆえの不器用さ、愛子の本当の気持ちが言えず、ずるずると好きでもない男と付き合ってしまうなど、自分達の青春期とかぶってくるところもあると思う。あまりにも理想的過ぎる甘い恋愛劇より、若者達のリアルな痛みを描いた恋愛劇の方を、もっと評価してみてもいいと思う。

それとすぐにヤンデレと決め付けるのもどうだろうか、不器用で人に依存してしまうのは誰にだってある(ただ単に病んでるのは別、あと人を刺すのはやりすぎだけど)。登場するヒロイン達は、自分達が作った幻想にまみれたヒロイン像から抜け出した、嫉妬したり、自己中心的な行動をしたりするリアルな心情を持つ、ごくごく普通の女の子達ではないだろうか。



この三作品は、現実にのどこにでもいるどこか弱い心を持つ高校生達を描いた良作なのではないか。


っと、ここで何でこんな文を書いたかというと、この三作品がボロクソに言われてるのを立ち聞きしてしまったからなんです。それはちょっとおかしいんじゃないのかと思っておもわず書いてしまった。でも人にはそれぞれ好き嫌いがあるからしょうがないのかな。



それにしても、こうも同じ枠組みの作品が、連続して放映されるのは珍しい。これからもこの系譜が続いていって欲しいと思うけど、 来期の新番には、そんな作品見当たらない。あっけなく3クールで途切れたか・・・、多分こういう作品達は、放送されなくなっていくのだろうな。