「スカイクロラ」が眠くなっちゃうのは当然かも〜細かすぎて伝わらない演出〜



スカイクロラ」を見て、眠くなるという感想を見たが、それは当然のことかもしれない。実際、僕が見に行った時は寝てる人が確かにいた。






押井守監督は、「スカイクロラ」上映に合わせて数々のメディアに登場していた。その中で、僕が一番タメになったと感じるテレビ番組のドキュメントが8月4日にNHKで放送された「アニメ監督・押井守からのメッセージ〜新作密着ドキュメント〜 」だった。


このドキュメント番組では、「スカイクロラ」に押井守監督が込めた演出の数々を読み取ることができる。





演出その1



演出その2




そこで印象に残った発言がこちら、


人間というのはたえず動いている。たえず動く無意識の作画をどうするか?たぶん誰もやってないと思います。現場的には徒労に終わる可能性もある。

アニメでやっている技術的な作業は9割はお客さんにはわからない。

それをやるかやらないかで、見終わったときの印象が変わることは間違いない。



このドキュメント番組では、上記の監督の発言をなぞる様に細かい演出の手法が紹介されていた。作画監督西尾鉄也さんも言っているが、かなり細かい作画への注文があったようだ。でも、はっきりと言えば観客にはほとんど伝わらないだろう。見終わったときの印象も変わるだろうが、それがプラスの方向へはたして行ったのだろうか。お金を払ったのに寝ている人がいたのを見ると、観客にはあまり伝わってなかったと思える。





番組では、水素がベッドに顔をうずめるシーンが紹介されているが、あの細かい指の動きから監督の意図*1を汲み取ろうというのは、観客にとってかなり難しいし、あまりにもわかり難い。


また演出のポイントとされている「長い間のある会話」。ここでは会話の中にある「静かで長い間」のある時間で、永遠の日常に生きるキルドレ達を表現しているというが、その演出意図を劇場で感じ取れるものなんて、よっぽどの押井信者か、よく訓練されているアニオタだけだろう。アニオタでもなんでもないテレビのCMを見て、観に行った一般の観客たちにはただ間延びしたシーンだなとしか感じとれない。それは読み取れない観客たちが悪いのでは、全くない。そんな細かい演出意図を読み取れないのは当たり前だ。逆に観客にとっては、退屈して眠ってしまうのを誘発している部分もある。「会話のキャッチボールをしないで間を作る」という方法も果たしてうまく機能していたのだろうか。このキルドレ達が永遠に生きる日常を表現するための「長い間」は、観客を退屈させてしまう要因に繋がってしまっていたのではないか。




今までの押井監督作品には、「長い間のある会話」、優一や水素の「ワンテンポ遅い会話のキャッチボール」はあまり見受けられない。「イノセンス」より退屈だったというのは、ゆったりとした間がそう感じさせていたのかもしれない。激怒する人がいるのには、こういう理由もあるのではないか。






崖の上のポニョ」では、観客が眠くなるということはまずない。見てわかりやすい演出、大量の作画枚数を要した動きぱっなしのアニメーション。観客は眠くなる暇さえなかっただろう。

それと相反して、約5万枚の作画枚数を費やした「スカイクロラ」には、ポニョが海の上を走っているようなわかりやすく、インパクトがある動きはほとんどない。CGによる空中の戦闘シーンは圧巻だが、多くの観客が好む、見て楽しい、見てわかりやすい、というものは皆無と言っていいのではないか。*2




「若い世代に伝えたい」と監督は製作発表の段階から公言しているが、押井監督が「スカイクロラ」に込めた「細かすぎて伝わらない演出」の数々は、多くの人々にはあまり伝わってないように思える。でもそこが押井守監督らしいと言えばそうのなのだが。








あとここからは、劇場に行った個人的な感想。

CGの空中戦闘は凄いの一言。カメラワークもさることながら、効果音が秀逸。アメリカのスカイウォーカーまで行った意味が十分にある。個人的には結構楽しめた。気になったのは、煙草。何故だか皆吸っている。水素とか、火つけたら速攻で捨てるし、別に吸いたくて吸っているのではなくて、退屈な現実を紛らわすために吸っているのかな。劇中には、ミートパイ、酒、煙草、セックス、ボーリングしか娯楽がない。音楽とかは聞かないし、本も読まない。永遠に生きるって原始的な欲求に移り変わっていくのかな。猫飼っているキルドレがいたけど。







僕が行った劇場は、地方の郊外にあるシネコン。平日だったし、公開されてずいぶんと日が経っていたので、自分を入れて7人しかいなかった。多分近いうちにこの映画館は潰れるな。


前に座っていたカップルが、開始早々飽きてしまったらしく、彼女の方はずっと髪をいじっていた。彼氏は爆睡。後ろのカップルも後半*3から飽きてしまったらしく、「足、しびれた〜」などと小声で話していた。




観終わった後、サブカル系女子二人組みが大声で、



「希望なんてないじゃん。何を伝えたいんだよ。アホか」




と嘆いていた。的確と言えば的確だ。


僕の最終的な感想は、




「上官が痴女」



食事をしている時に、服を脱ぎだすって・・・・・

*1:水素が優一のことをとても愛おしく感じている

*2:ボーリングのシーンは笑っている人がいた

*3:ボーリングが終わって、水素の長い独り言が始まる辺り