『オオカミさんと七人の仲間たち』第6話「おおかみさんと赤ずきんちゃん、ついでに亮士くん」


 第6話は、涼子、亮士、林檎の三人の回想で物語が綴られる。林檎と涼子の出会いを林檎からの視点で、涼子と林檎が親友になるのを涼子の視点から、涼子と林檎が高校生になった様子を亮士の視点から(主に涼子)、三人の各自の視点で三人の過去が描かれていく。特定された視点から、多様な角度から、物語は展開される。



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 第6話において、度々登場するのは、電車と河原。Aパート冒頭での亮士と河原、涼子の回想での不良との喧嘩での河原、Bパートでの亮士と河原、そして河原とセットで登場するのが電車(Aパート冒頭の河原には電車は登場しない)。


 涼子の回想。河原で不良に絡まれている男子学生を見かけた涼子は、不良達に飛びかかっていく。そこでは、橋を渡る電車を捉えた仰角ショットが挿入されたり(電車の影の前振り)、電車の影によって印象的に捉えられた涼子が映し出される。この後涼子は、不良たちにボコボコにされる。



 涼子の回想が終わると、亮士の話へと移行する。夕暮れの中、河原にいる亮士。林檎の「強くなって下さい」の台詞と共に、電車が映し出される。前景に亮士、後景に電車を捉えたショットでは、まるで亮士の顔(眼)から電車が飛び出ているようにみえる(画面左へと電車は移動する)。この後、亮士の回想へと移行する。



 亮士の回想が終わると(夕暮れから夜へと時間は経っており)、亮士の顔から出て行った電車は、亮士の顔へと戻るかのように画面右へと移動する。回想を経て、亮士は涼子を守りたいと願う。涼子を守れる・全部を包むことができる強い男になると亮士は決心する。



 この三つのシークェンスに共通するのが、「強さ」。


 「強くなりたい」と願う涼子は、電車が橋を通過する中、不良高校生三人組みに無謀にも喧嘩を売る(返り討ちにされるわけだが)。

 林檎の「誰よりも強く」の台詞と共に電車が映し出される。

 好きな女(涼子)が男に襲われようとしているのに、動けなかった・守れなかった自分を悔いて、亮士は涼子を今度こそは守りたい、全部を包むことができる強い男になると決めるのと同時に、電車が映し出され、亮士の身体へと入っていく。


 電車は、登場人物たちの「強くありたい」という心情を象徴するかのように登場する。登場人物達の想い・願いが疾走する時、電車もまた轟音を発し力強く疾走する。



 第1話で亮士が初めて涼子に告白した時、涼子に私のどこが好きだと問われて、「強いところ、かっこいいところ」と答えた亮士(本当は別のことがいいたかったのが、誤って涼子に伝わってしまった)。第6話で再び涼子に告白するとき、亮士は涼子に強さを求めるのではなく、自分が強くなると宣言する。良いシーン。

 強くなるということは決して力(暴力)の話ではない、以前涼子は力(暴力)を求めていたようだが、今は違うだろう。強さとは、心の強さのことであり、林檎はそれを亮士に求め、亮士も心を強くしようと、涼子を守れる強い心の力を得ようとする。



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 お伽噺を意識してか、第1話は三人称で展開されており、ずっとそのスタイルを貫くのかなと思ったら、そんなことはなく、今回の回想では一人称になったりする。なぜだか貫かれない。客観的だったり、主観だったり。