『Another』第5話のメモ 生きている者の描写


 コンテ/吉原正行、演出/許螬、作画監督/小島明日香。


 見崎鳴が、存在しているか、存在していないかが一応判明する面白い回だった。


 『Another』では、今まで鳴が生きている者か死んでいる者か、物語面・映像面の双方において、どちらでもとれるように描いてきた。

 例えば第5話でいうと、Aパート、教室で鳴に話しかける恒一のシーン。画面手前の男子生徒を利用して、画面奥の恒一の隣にいる鳴を巧妙に隠して存在しているかどうかを曖昧にする。男子生徒の裏にいるかもしれないし、いないのかもしれないという描き方。このように物語だけでなく、映像的にも見せていく。




 こんな具合に鳴の存在をあやふやにする描写を今まで数々してきたわけだが、ついに今回真実が判明する。


 そこで、ちょっと感動した描写がある。


 Bパート。鳴の正体が判明するシーン。「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。」が実は自宅だとわかり、いつも地下室の奥から出てきた理由も明かされる(布の奥にエレベーターがある)。


 恒一を自宅へと招き入れる鳴。ここで、僕が胸を打たれたのが、『鳴が飲み物を飲む』ということ。飲み物を飲む行為=食という行為が、人間としての「生」を強く感じさせる。今まで鳴が食事をとるシーンはなかったように思える。それは、鳴が死んでいる者なのか、生きている者なのか曖昧にするためなのだろう。死者は缶ジュースなんて飲まない(=死者は飲食しない)。鳴が生きている者だとわかった時にすかさず「飲む」という生きている者特有の行為をさせて、彼女は人間だと表現する。この描写が良いなと僕は思った。




 それと、鳴が存在している者とわかった途端に鳴の私服の半ズボン姿を披露させるのはなかなか。今まで、意図的に制服姿しかみせてこなかったが(幽霊と思わせるため)、私服姿を見せることによって、彼女の内側へと一歩足を踏み入れる。服装によって、幽霊と生者を描き分ける。




 鳴の人間っぽいというか、女の子っぽい描写も良かった。台詞の「特別に認めます」と体をくねってする仕草が素晴らしい。今までの人形的な素振りから一変して、普通の女の子としての鳴の素振り。良いです。




 「なんで・・鳴に似た人形があるんだ。これは一体・・・」と不気味に思わせておいて、実は自宅でした、この人形を作っているの親でした、というオチは思わず笑ってしまった。そりゃ、そうですよね。