みなみけ〜おかわり〜

冬樹が去っていた。名前の通り冬に来て、春になったら去っていった。いったい彼は何だったのだろう。誰の記憶にも強く残らず、誰も去ることを惜しまない。彼はそうやって今まで生きてきたのか。
自分を殺して、誰かに迷惑をかけないように、誰かに恨まれないように、率先して嫌なこともやり、うまく立ち回ってきた。誰かと深く関わろうともせずにしてきた。それは、自分が傷つくことを恐れていたからだ。人に嫌われて、傷つくのが嫌だし、誰かと深く関わると別れるときがつらい、自分の気持ちを表に出して他人に否定されるのは怖い。彼はずっと逃げていた。しかし彼は、彼女と出会う。その女の子は、彼の心情を見抜き、いつもイライラしていた。傷つくことを恐れて、自分を殺すなんて彼女には理解できなったからだ。その女の子に出会い、彼も少しずつ変わり始めた。ほんの少しずつだが、自分を出そうとしてきた。

しかし彼女との別れの時がやってきた。別れのときを無理やり引き伸ばしでも彼女と運動会に出たかった。でも別れるのがつらいから、さよならは言わずに去っていった。

彼は彼女の胸に刻まれた。ただそのためにやってきたのだった。