文化庁メディア芸術祭「マンガとアニメの未来」〜主に幾原邦彦監督について〜



国立新美術館でおこなわれている文化庁メディア芸術祭のテーマシンポジウム「マンガとアニメの未来」に行ってきました。

出演者は浜野保樹さん(東京大学大学院教授/メディア芸術祭運営委員)、細萱敦さん(マンガ研究家)、幾原邦彦さん(アニメーション監督/アニメーション部門審査委員)の三人。


多分、どっかにこのシンポに関しての詳しいレポがあがると思うので、僕はアニメと幾原邦彦監督の発言に関してだけ、書いていきたいと思います(アニメ系ブログだし)。下に書いているのは、メモったものを書いたもので、かなり断片的なものです。幾原監督の発言と異なっている部分もあると思います・・・。









最初は浜野保樹さんのヨーロッパでのアニメとマンガの現状について、次に細萱敦さんの海外でのマンガの現状、そして幾原邦彦監督の現在のアニメに関して。





・ハリウッドで「鉄腕アトム」や「鉄人28号」や「ガッチャマン」などがCGアニメーションとして次々とリメイクされている。なぜ世界中から日本のアニメーションやマンガが求められているのか?



2000年前後のインターネットの普及やYouTubeで広く認知された。ビジネスとしては、60年代、70年代からアニメを輸出していた。それを観ていた世代の人達がハリウッドの偉い人達になり、作品を製作している。ハリウッドの影響で再び求められるようになった。




・なぜ日本のアニメーションだけ注目されるのか?




韓国などに脅かされることはないと思う。アニメを作っているのは日本だけ。テレビアニメを毎週作っているのは日本だけ。これは、日本の1億2000万人の人口や土壌でペイできるから。日本のコストパフォーマンスだから成立している。ディズニーが製作していたフルアニメーションのコストパフォーマンスには対応できない。東映白蛇伝があったけど、それでは対応できない。手塚治虫が「鉄腕アトム」という大胆なコストパフォーマンスを成立させたから、今のアニメがある。2000年シンガポールに行ったとき、海外の偉い人達にあった。日本のアニメがコンテンツとしてどうかより、フルフレームじゃないこんなアニメはアニメーションじゃないと馬鹿にしていた。でも、2、3年後したらインターネットの影響で日本のアニメがおおいにウケた。そしたら、手のひらを返したように偉い人達が接してきた。

サブカルチャーというものを作っているのは、日本だけ。なぜ日本だけなのか。インドなど他の国にはないのか。それは、戦後日本人の価値観が欧米にいち早く感化され、無宗教でわかりやすいものを作れたから。言わばハリウッドみたいなもの。インドやヨーロッパでは宗教や慣習などが根強いためにうまくつくれない。

マンガやアニメは貧乏な物として始まっている。だから、映像に関してフラストレーションが溜まっており、マンガにモンタージュなどの映画の文法を取り入れた手塚治虫のように、ハリウッドとは真逆の実験的なことをたくさん実行できた。





・アニメとファッションの話と幾原邦彦監督の現在の仕事について





ゴスロリというジャンルがある。あれは、マンガ的なものをミックスさせた。ファッションとアニメは同一線上で語れるのではないか。ファッションとアニメ、つまりゴスロリ的なものが次にくる?



そして、幾原邦彦監督がアパレル関係とタイアップしたという作品の企画がスクリーンに映し出される。SF的な作品世界のイメージカットが流れ、その次にキャラクターデザインが映し出された。随分と最近のアニメっぽいキャラデザで、どっかで見たことがあるような画風だった。これが幾原邦彦監督の最新作になるのだろうか? テレビアニメとかじゃなく、ショートフィルムっぽい感じ。っていうかアニメ作品なのかも不明。まぁ、準備しているとのことだった。






・そのほか、いろいろと



紛争や大不況の中、日本のアニメやマンガがポジティブなビジョンを与えている。今や、万博的なものではうまく未来を描けない。日本のアニメやマンガが明確なビジョンをコンテンツとして提供している。

フランス革命活版印刷の話。


日本の1億2000万人の特別なサロンとでも呼ぶべき環境が、コンテンツを作るのに向いている。ネットの影響で日本が東京化している、そのため日本の文化がコンテンツ生成に向いている。


日本人はマゾっぽい。我慢好き。ものすごいストレスや我慢を机の上の絵にぶつけている。フラストレーションで成り立っている。


日本人は、夢をみるのが好き。空想家。自分たちを世界の田舎者だと思っていて、いろいろと外の世界のことを空想していた。そしたら、いつの間にか周りを追い抜き、自分の方が抜きん出ていた。






・現状のアニメの問題点とこれから




ビジネスとして考えると、DVDが売れない。

ブルーレイも多分売れないだろう。レコーダーがあるし、今の若い子にはパッケージをもつという感性がない。YouTubeニコニコ動画を体験してきて、感性が変化している。私(幾原邦彦監督)の世代はパッケージを所有したいという欲があった。しかし、今の若い子には、その所有欲がない。この変化にどう対応するか?どんなビジネスモデルを構築するかが問題。一見厳しい状況に見えるが、逆説的にこれはチャンスである。なぜなら、今後の新しいコストパフォーマンスを発見する可能性があるから。若い人にとっては、手塚治虫以来の新しいコストパフォーマンス、新しいスタイルを発見できる可能性があり、決してネガティブなことだけではない。


今後は、中間がなくなってくると思う。「うまい、はやい、やすい」というわけではないが、低コストのアニメーションが多くなってくる。それと、とてもハイクオリティで質の高いアニメーションが多くなる。この二つのアニメーションだけが残り、中間に位置するアニメーションはなくなる。









・行ってきた個人的な感想




幾原邦彦監督は今後のマンガとアニメについてかなりポジティブに考えているようだ。



幾原邦彦監督の次回作というか、最新作(?)のさわりを観れたので満足。



要所要所に笑い声。


ここでは書いてないが、浜野保樹さんと細萱敦さんの海外におけるマンガとアニメの話はすごく面白かった。つげ義春谷口ジロー辰巳ヨシヒロの作品が海外でとても評価されているのにちょっと驚いた。日本の生活を描いているのが評価されているそうな。