初恋限定。 第12話「ハツコイリミテッド。」が面白い

坂道


 楠田悦、財津衛、曽我部弘之の三人組は自分を変えるため、あてのない旅(家出)に出ます。その途中、自転車で坂道を上るシーンがあるのですが、それは第12話の中でとても印象的で素晴らしいシーンでした。坂を上る、坂を下る、海を見つける、という事と三人の変化する心情がリンクしており、物語と映像がうまく噛み合って、爽快感溢れる出来になっていました。





 坂道をゆっくりと上っていく三人。坂道の上りなのでじわじわとしか進むことができません。



 ここで、財津がへ岬の忘れられない想いを吐露します。それに対し、曽我部も千倉のことが忘れられないと二人に明かすのです。坂道をじわじわと上る行為とお互いに自分の気持ちを少しずつ明かしていく様がシンクロしています。



 そして、坂道を上りきろうとする瞬間に、曽我部が千倉への想い、財津が岬への想いを叫びます。坂道の頂上に達するのと同時に曽我部と財津の想いが爆発するのです。



 そして、坂道が下りになり、自転車のスピードも加速し始め、それと同時に曽我部と財津の想いもさらに加速し始めるのです。二人は叫びながら、坂道を下ります。


 この時点で楠田はまだ自分の気持ちを明かしてはいません。そこで、二人が楠田に問いかけるのです。そうすると、画面は坂道を下る様を描いた背景動画に切り替わります。

 ここでちょっと話は脱線して背動について。一瞬カーブミラーに光が反射する所とか、ガードレールに迫る所とか、細かい所までなかなかよく出来ているんですよね。いい感じのスピード感も出てますし。この作品で観れるとは思いませんでした。最終回ってこともありますしね。

 

 閑話休題。財津、曽我部は江ノ本のことで楠本に問いかけます。ここで徐々に楠本も自分の心の内を明かしていきます。「旅に出た理由は?」と問いかけられ、「自分に自信が欲しかったんだよ」と楠本は答えるのです。


 ここで、映像は坂道をくねくねと下っていく様から、まっすぐな道をスピードをあげて進む様に切り替わります。今までの「曲がりくねった道」は、「楠本の思い悩んでいる心情」を表しており、この坂道を下る描写は、楠本の心情そのものなのです。そして、「まっすぐ伸びた道」は彼の「自分の心を明かし吹っ切れた心」を表しています。楠本が本音を曝け出したら、画面は光に包まれ、真っ白になります。



 そうすると、真っ白なキャンバスに鉛筆で描いたような楠本、曽我部、財津が映し出されるのです。


 三人が映し出された後、夕日に照らされ黄金に光輝く美しい海が画面いっぱいに広がります。彼ら三人が自分の想いをすべて吐き出し(=余計な物を取っ払って真っ白になった三人)、自分の心に素直になったために、あの「光り輝く海=自分のありのままの素直な美しい心」に出会えたのでしょう。あの光輝く海は彼らの心そのものを意味しています。



 そこで、素直な心に出会えた楠本の頭に真っ先に浮かんだのは江ノ本でした。「光り輝く海=自分の素直な心」のカットの次が江ノ本だったのは、江ノ本が好きだという純粋で素直な気持ちがよく表れています。



 その後、三人は「光り輝く海=自分の素直な心」に入りそれぞれ「大好きだ」と叫ぶのです。自分の気持ちを全て明かし、清々しく晴れ渡った彼らの表情がとても印象的です。



 ここの一連の流れは、楠本、財津、曽我部の心情を見事に描き上げた素晴らしいものだと感じました。


 そのあと、女子が三人を追いかけてそれぞれの気持ちを確かめるのですが、そのことについて書くとやけに長くなるのでやめときます。あと、土橋の所なんて観てるこっちが小っ恥ずかしくなりました。




ED


 「初恋限定。」で毎回心に残るものの一つとして、EDへの入り方があります。今回はあゆみが財津家の「呼び鈴」をならして、marbleさんの「初恋 limited」がかかり、「初恋限定。」のタイトルが表示されます。「あゆみが自分の初恋についての答えを出す」というのを「呼び鈴」を押すことで表現しているのは、とてもいいです。曲に入るタイミングも絶妙ですね。




スタッフ


 最終回ということで、今回は監督である山川吉樹さんがコンテだけでなく演出も担当していました。作画監督には、キャラデザを担当している下谷智之さん、中山由美さん、佐野恵一さんの連名。作監補には井本由紀さん。原画には岩倉和憲さん、田中将賀さんなど。とまぁ、JCの主力スタッフとゆかりのある方で。

 気合い入ってたなぁ。女性陣の描かれ方がやけにかわいかった。







 最終回、個人的にすんごく面白かったです。スタッフの皆さまお疲れさまでした。