うみものがたり〜あなたがいてくれたコト〜 第9話「愛する心」が面白い


 アバンでは、オレンジ色というか、萱草色の空(太陽に靄が覆ってるためこの色になっている)と光輝く海が映し出され、ウリンとセドナの会話のヴォイスオーバーで始まる。ここでは、萱草色の空をアバン中ずっと映し出し、この空の色を視聴者に強く意識させる。この空が後々意味を持ってくることになる。







 Aパートは、宮守家から始まる。夏音はマリン達がまだ家にいた時のことを回想しながら、物思いにふける。マリン達が居たことがまるで夢のようだったと感じながら。そして、マリンが自分にとってどれほど大きな存在になっていたかを認識するのであった。窓から海を見ると、そこにはマリンがいた。駆け足でマリンの元へ向かう夏音。ここでは、空の色で視覚的にマリンと夏音の心情・状況を表現していく。二人が会話している時、マリンの背景には、オレンジの空。夏音の背景には、青い空が広がっている。オレンジの空は、心の闇、弱り切った心。澄み切った青い空は健全な心、純粋な心を。普通なら、マリンには純粋な心を持ち、夏音が邪悪な心を有しているはずなのだが、ここでは逆だ。現在、マリンはウリンを失くし、巫女にも変身できない程、心に闇を抱え衰弱している。夏音は、巫女に変身できる心を持ち合わせている。マリンは、夏音に巫女に変身できる方法を、純粋な心を取り戻すためには、どうしたらいいのか、助けてほしいと泣き崩れる。この時、背景は青い空に切り替わる。マリンは、青い空=純粋な心・健全な心を取り戻したい、欲しいと願う、だから背景が青い空が映るカメラアングルになるのだ。懇願するマリンを見て、夏音はマリンの元へ近寄る。ここからは背景はオレンジの空になる。夏音は、青い空から、オレンジの空=マリンの元へ行き、「わかった、一緒に考えよう」とマリンに言う。オレンジの空=心の闇を持つマリンの所に自ら向かうのは、夏音がマリンの心の闇を変えようとする強い意志の表れだ。青い空、オレンジの空を使い、二人の心情をうまく伝えている。








その後、二人は一緒に風呂に入る。夏音はマリンにシャワーを浴びせながら、髪をとかす。シャワーを浴びせながらなので、お互いの距離は非常に近い。裸の付き合いというか、今まで少し離れていたお互いの心が近くなり、そして裸(身も心も)になって接している。シャワーを浴びる事によって二人の心が再び近づいていく。






シャワーを浴びた後、マリンと夏音は、鈴木にヨガを教わることになる。このヨガはマクガフィンというか、なんというか。ヨガ自体に意味はなく、マリンと夏音に同じ行為をさせるのが目的だったのだろう。気持ちを落ち着かせるというわけではなく。同じ行為、それは巫女に変身すること。これは、巫女に変身する踏み台として使われ、マリンが夏音の過去を知るきっかけになったのだ。そのための「きっかけ」としてのもの、それがヨガだった。

にしても、スタッフの中でヨガやってる人いるのかな。吉田玲子さんとかやっていたりして。




マリンと夏音は一旦別れることになる。最終的には、自分の心と向き合わなくては解決に至らない。二人が協力しあうことは大切だが、自分の心と向き合えるのは自分しかいない。そうして二人は一人になる。




Bパートに入り、マリンは小島とバス停で雨宿りし、夏音は一人雨に打たれる。




夏音と大島が出会うシークエンスでは、ハイウエイのような道路が描写される(島だからハイウエイとは思えないんだけど、適当な言葉が見当たらない。国道なのかな)。この道路は後々にも登場する。夏音が雨に打たれながらいるシーンでは、その道路が描写される。のどかな島には似つかわしくない大きな道路。マリンと小島がいる小さな農道とは、正反対の無機質な大きな道路。なぜ今まで描写されなかったこの道路が今になって描写されるのか。小島と出会う時、夏音は人に対して心を閉ざしていた。夏音は雨に打たれながら、自分の今まで閉ざしていた心と向き合っていく。この大きな道路は、夏音の閉ざした心を象徴する舞台装置ではないのか。小島との距離が縮まっていくと、描写されなくなっていく。夏音の心が晴れ、心を開こうとすると、大きな無機質な道路から出ていくのだ。






マリンが変身可能になったことに、唐突な印象を少々受けるかもしれない。唄の意味を聞いて変身可能になったようにも思える。しかし、マリンが変身可能になったのには、小島、鈴木からたっぷり聞かされる過去話が起因なのだろう。マリンが変身できなくなったのは、人を愛することを忘れ、誰かのせいにする、人を傷つけることをしていたからだ。夏音の過去話を聞き、人を愛することを取り戻すマリン。