『こばと。』第3話が面白い〜雨の風景と出会い〜


 『こばと。』第3話「…雨の贈りもの。」について色々書いていきたいと思います。短めに。



雨の風景


 第3話のタイトルにもなっている「…雨の贈りもの。」という通り、「雨」の描写が第3話では頻出し、「雨」が小鳩に「贈りもの=人との出会い」を届けてくれるという作りになっている。「雨」を使って、人を紡ぎ合わせることがなかなか面白いなと思ったので、そのことについて色々と。


 「雨」という灰色の風景は、暗いとか、不吉とか、負のイメージが付きまとっているもので、雨はよくない事の前兆やら、主人公の心に影を落とすなどの描写に度々使用されてきました。ですが、『こばと。』第3話では負のイメージとして、「雨」の風景が使われるのではなく、小鳩と人を紡ぎ合わせる装置として、人と人を融和させる装置として機能しています。





・Aパート冒頭、雨が降る中、小鳩は公園で沖浦清花と会います。清花に連れられて、小鳩は三原千歳が管理人であるアパートへと行きます。そこで、小鳩は千歳と出会い、新しい家を得ることになるのです。


・アパートから保育園へと向かう途中、雨の中走っていた小鳩は田所むつみと曲がり角で思わずぶつかってしまいます。ぶつかった拍子に地面に落ちたいおりょぎさんをむつみは拾い上げ、ハンカチで拭ってから、小鳩へと渡してくれます。


・晴れていたのに急に雨が降り、店の軒先へと雨宿りをする小鳩。雨宿りをした店、洋菓子店「チロル」の店長である植田弘康と出会い、小鳩は傘を貸してもらいます。


・コンビニで情報収集をしようとする小鳩は、植田弘康から借りた傘を店先の傘立てに置いて、店内に入ります。小鳩がコンビニから出ると傘は何者かによって持ち去られていました。意気消沈する小鳩ですが、コンビニから出てきたむつみと偶然再会し、傘を貸してもらいます。





 上の箇条書きで述べたように、「雨」という落下運動は人との新たな出会いを誘発し、傘を貸すことで人とコミュニケーションをかわさせる機能を果たしています。そして、Bパートラスト、むつみと田所を繋ぎ合わせる今話のクライマックス。


 コンビニで桂木が女の子と相合傘をして一緒に下校している所を目撃してしまったむつみと小鳩。小鳩は桂木とむつみに相合傘をしてもらい、仲良くさせようとします。桂木を公園に連れ出し、むつみと相合傘をしてくださいと頼み込む小鳩。ここで、多くの視聴者の方は、「おいおい、おせっかいすぎる。そんな勝手なことをするとむつみに絶対怒られる」とツッコミたくなったでしょう(僕だけかもしれませんが)。どうみたってお節介ですから、むつみに「余計なことするな」と言われることは必至だと思われました。しかし、むつみが怒ることはなかったのです。しかも事もあろうか、桂木とむつみは以前よりも距離が縮まったのです。むつみを怒らせず、二人を融和させたものは、会話中降ってきた「雨」でした。前述した通り、第3話において「雨」は人との融和を促す装置であり、「傘」を媒介にして人は他者と間接的に繋がることができるのです。「雨」という装置と「傘」が半ば強制的に、むつみと桂木の融和を促した結果、二人の距離は以前よりも縮まったのです。もちろん、小鳩の存在も大きかったと思うのですが、「雨」も十分大きな役割を果たしたのでしょう。




 雨に濡れないようにと雨宿りをするとそこで新たな人との出会いがあり、傘を貸すという行為で人と繋がったり、相合傘で二人の距離が縮まったりと、「雨」は人の心の距離も身体の距離も縮めて繋がせてくれるプラスのものとして『こばと。』では機能しているようです。「雨」がマイナスのイメージでなく、プラスのイメージとして機能しているのは、『こばと。』の作品世界を象徴しているものかもしれません。『こばと。』の世界というか、小鳩は何事もマイナスとして物事を捉えるのではなく、すべてをプラスとして捉える。第2話で皆から陰口を叩かれていた俊彦の母親のことを「すごい」と褒めたように、小鳩にとって既存の価値観によるマイナスというものは存在していないかもしれません。




気になった構図〜おまけ〜


 『こばと。』第3話では、暗い話とかいやーな空気の時はその状況を表したかのような構図が多いなと思ったのでそれについて色々と。



・藤本清和が清花に何回痛い目見てるんですかと言う所。奥行きを強調した構図になって、二人が遠くにいるような感じ。清花の顔が描写されない。清花にどこか物哀しさが漂う。



・コンビニで桂木と女の子が相合傘をしているのを小鳩とむつみが目撃する所。前景に桂木と女の子、後景にむつみと小鳩。前景の桂木が画面左から右方向へと移動する。前景の桂木が目隠しとなって、後景のむつみ達がよく見えないのだが、桂木がフレームアウトすると、黄色い傘で自分を隠すむつみが出てくるという流れになっている。構図というか、見せ方がなんか良いなと思った。このショットの前のショットとの繋ぎ方も良い。桂木がコンビニ側(むつみ達がいる方)を向いた瞬間に傘で自分を隠すむつみが映し出される流れが良い。ここら辺の一連の流れは個人的によかった。



・公園に小鳩、むつみ、桂木が集まる所。三人を俯瞰から捉え、緑に覆われた屋根で意図的に三人の顔を排除させている(むつみは後ろを向いている)。三人の微妙な雰囲気が如実に表れている(図1)。後景の小鳩達から前景の屋根へとフォーカス送りをして、雨が降ってきたのを知らせるのも芸が細かい。次のローアングルから捉えられたショットもパンしていくと前景の紫陽花から後景の小鳩達にピントがあわさる。ここでも、小鳩達の顔は排除されている(図2)。ベンチと柵(?)の線の枠で小鳩達の上半身(頭部分)へと視線が誘導されるのも細かい。三人の気まずい雰囲気を出すために、それぞれの顔を描写させずに、どんな表情になっているかを見せないあたりはなかなか良いなと思った。この後、小鳩が周りの雰囲気を明るくさせると、二人の顔が描写される。


図1

図2





他にも気になる構図が多かった。