『君に届け』第12話における黒沼爽子と胡桃沢梅と光と影

黒沼爽子と胡桃沢梅


 『君に届け』第12話「恋愛感情」は、いつにも増して背景が、きらきらしていたり、どんよりしていたりと、登場人物(主に黒沼爽子と胡桃沢梅)の変化や状況が把握しやすかった。


 Aパートは主に爽子の視点で話は進む。主に爽子と胡桃沢のツー・ショット。



 爽子や胡桃沢が風早を見るときは、青色(水色)がメイン(なんだかシャツも青っぽい)。そこに三角形やら、五角形やら、円などのなんかよくわからん図形が散りばめられる(漫画の表現というか、漫符?)。彼女らが見ている主観では、風早君はよくわからん図形を身に纏って青色できらきらと輝いている風に見えるのだろう(好意のあわられ?)。



 青色風早の次に映し出される爽子も青色に。青色の持続。青の色彩が漂ってくる香りのように、爽子が映る画面に入り込んでくる。「目が追っちゃうもんね」っていう台詞通り、爽子の目の前には青色(=風早君)がある。



 パンダウンすると、風早を見ている爽子、風早の全体像、見られている風早のアップ、と移行する。カットを割らずに、同じショット内で見ている者と見られている者が地続きで繋がれる。地続きなため爽子と風早が繋がってる感がある。背景はオレンジ色(?)というか、暖色系の温かな感じ。幸せそう。



 風早の気持ちも自分の気持ちも知りたいと言う爽子がめちゃくちゃ輝く。過剰なまでに輝く。というか輝き過ぎ。それほど、希望に溢れた、輝く気持ちに溢れていることがあらわされる。



 爽子に宣戦布告され戦慄が走る、ような背景。随分と細かいところまでやるなっていう印象。 



 心を決めて立ち上がる胡桃沢が青色(水色)に染まる。爽子のPOVなのかもしれない。


 ここで爽子と胡桃沢は。一端別れる。


 振りかえる風早から恋愛感情という気持ちに気付き、ハッとする爽子を超クロースアップに切り替わり、そして見ている爽子と見られている風早が、またもや同じフレーム内におさまる。風早と爽子だけに起きる現象。



 今までずっと見られる側だった風早だけど、こんどは見る側に。この事が尾を引く。




 ここからは主に胡桃沢視点。




 胡桃沢とピンとの絡み。外見はきらきら。中身・本性はどす黒い色調。この二つがバランスよく配置されている。


 渡り廊下。入ってくる自然光が強調され、急に陰影が明瞭となる。光と影がくっきりと。真剣味、本気さが顔の陰影から伝わってくる。ロング(ともはっきりと言えない微妙な)で捉えられた胡桃沢。誰もいない、誰も通らない渡り廊下。彼女の焦燥感や一人ぼっちの感じなんかがあわられる。走ってきた彼女は一端止まり、歩きだす。



 下駄箱のシーンでの矢野と胡桃沢の会話。一端下駄箱に前に集まった二人だけど、場所を移動し、自動販売機の前に矢野、下駄箱の陰に胡桃沢が配置される。自動販売機の前の矢野は光に照らされ(自販機の明かりが照明になってるのかどうか)、このシーンでは一貫として影に覆われる胡桃沢。胡桃沢の本性を感づいている矢野とその追及をかわす胡桃沢。奥行きが強調されている、矢野と胡桃沢を捉えたショット。光(矢野)と影(胡桃沢)の対比と対立。



 矢野の追及が加速し、矢野がジュースのパックにストローを刺すと、水滴のような球体に囲まれる胡桃沢の後ろ姿が捉えられる。それは、矢野がパックに刺したストローがまるで胡桃沢の心に突き刺さり激しく内面を動揺させたかのようなカット割り。



 球体が紫色(どんよりとした)に変化し、矢野(=光)と胡桃沢(影)がフレームの両極に置かれる。対比と対立はピークに達する。それでも、しれっと矢野の追及をかわす胡桃沢。



 今回の挿話で個人的に一番気になった所。胡桃沢の暗い色調の暗黒オーラが時間と空間を超えて持続された形で次のショットに反映されている所がちょっと驚いたというか、気になった。こういう色彩の使い方もあるのかと。その胡桃沢のどす黒い暗黒オーラは体育館でバレーをする矢野・爽子に送られたもの、というか爽子に襲いかかる。




 ここで胡桃沢視点は一端終わり。


 こんどは、爽子に移る。相変わらずの温かい感じの色彩。


 一端別れた爽子と胡桃沢が再び交わり、また別れる。ここから同時並行的に、クロスカッティングで、爽子と胡桃沢が捉えられていく。


 爽子と真田側。冒頭から真田の背景がきらきらすることはなかったが、真田の「千鶴一筋」の発言から一転し、真田の背景がきらきらと輝きだす。それは、爽子が真田の内面を初めて知ったからなのだろう(あと恋愛感情の話とか)。



 胡桃沢と風早側。胡桃沢が真田のことを話しだすと、完全にイメージであろうフェンスが画面に登場する。前景の焦点のぼやけたフェンスと後景の巨大なフェンス。それに挟まれる風早(あと胡桃沢)。遠近感というか、現実にはありえない感じなので、このフェンスはイメージなのだろう。ソフトボールの時繰り返し映し出されたフェンスがここに繋がる。風早の動揺が浮き彫りに。あと、風早の方を向くと顔が陰に覆われる時の胡桃沢の恐さ。



 窓越しに捉えられた胡桃沢と風早。画面の半分以上を占める黒色がかもし出す風早の激しい心の揺れと暗黒の奈落にでも落ちていくかの勢いの絶望感。インパクトがある構図。



 そして最後、見られる者だった風早は見る者に変わり、爽子と真田がいるのを目撃する。



最後に


 背景が、きらきらだったり、どんよりだったりっていうのが、ちょっと多すぎたような印象を受けた。そこまで示さなくてもっていう感じで。でも特徴ある回だったのは間違ないと思う。