『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』第1話が面白い

 今期一番期待していた作品『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』。神戸守監督にとって『エルフェンリート』以来のTVアニメ監督作品(『鬼公子炎魔』や『電波的な彼女』などのTVアニメ以外では監督をしていたが)。しかもオリジナル作品ときたから期待せずにはいられない。でも、こんなこと言うと怒られそうですが、吉野弘幸さんはあんま好きじゃないというか、苦手。そうはいっても、どう展開していくのか楽しみなのには間違いない作品。


 第1話でまず目にとまるのは、背景の巧緻さや美しさ。

作品の舞台は、架空の国・ヘルベチア共和国にあるセーズという名の小さな街です。
この街は、スペインの中央に位置する歴史的城壁都市・クエンカをモチーフに創られています。


 と公式サイトに書かれている通り(サイドバーにあるブログパーツから公式サイトに行けます)、綿密にロケハンされて作り出される背景美術は、物語に説得力を与えている。


 その作り込まれた背景が確固とした世界観を構築していると観ていて思った。小道具も細部まで書き込まれている丁寧さ。



 ロケハンをして作られた西欧風な作りとは逆に、冒頭に映し出される兵士たちが遊んでいる花札っぽいものやグリコのランナーを彷彿とさせるキャラメルの缶、水かけ祭りに出されているリンゴ飴やおにぎりやお面(ひょっとこなどがある)、祭りにおけるリオの衣装など、随所に西洋と東洋(主に日本)の文化が混在しているのが、気になるというか、作品の特徴なのかな。祭りでの一面に置かれているお面がそれを象徴しているのではないでしょうか。

 小道具を使用して、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の作品世界がどのようなものか示されている。第1話ですから、当然と言っちゃ、当然ですが。





 カナタがイルカの置物を見ているシーンでは、貨幣(通貨)の単位まで提示してますしね(10円25銭)。



 『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の世界の説明とかは、冒頭の列車内での兵士たちの会話などの登場人物たちの会話でなんとなく推測できるようにに作られていて、無理やり説明するのは避けている。






 第1話は主にFIXで捉えられており、PANなどのカメラワークはあんま多用されていない。動より静の印象の方が強くなっている。画面が固定されているため登場人物たちの芝居の一つ一つがしっかりと見られるようになっており、1カットの動きのクオリティが高い。というか、細やかな芝居を人物たちが行う。祭りの時のカナタとか。


 とは言っても、登場人物たちに動きがある所(心理的な変化も含めて)、カメラワークが必要な所では、カメラはもちろん動く。カナタが夕日に照らされて崖を見下ろしているシーンで、カナタがフクロウに奪われた鈴の音を聞いてハッとした瞬間、カナタの横顔を捉えていたカメラが回り込んで正面の顔を捉える所とか。

 ここぞという時に、必要な時に、カメラは動く(当たり前の話だが)。



 それとなんでだろ、クロースアップとか結構あるけど、全体的にカメラが引いている印象が強いなぁなんて思ったりしている。ロングショットで街の風景を見せているのだってそこまで多くないのに、なんでだろ。





 画面に感じる印象は静かなとか、緩やかな感じ。音楽がそれに拍車をかけている。音楽は誰なのかなと確認したら大島ミチルさんだった。古っぽいというか、懐かしい感じの音楽。カナタが崖から見下ろしているシーンでは、大島ミチルさんがインタビューで語っている「フランス語の歌詞やフランス人のボーカリスト」が使われていました、なんでフランス? ちょっと疑問に思ったり。大島ミチルさんが作り出す音楽はこの作品にあってるな。




 最後に気になったところと個人的に良かったところ。


 冒頭の回想シーンが気になった(後の回想も)。全体がモノクロ(っぽい)で構成されているんだけど、所々に色彩が散りばめられている。はじめは色彩によって、視点の誘導がなされていると思っていて、タイルの青からカナタの服の青へとか。でも一概には言えなくて、うずくまっているカナタだけ色彩が奪われているショットは、視線の誘導とかじゃなくて、カナタの喪失感や孤独感をあらわしているのかなとか(図1)。

 タイルの青に挟まれ、奥の方(外)にいる女性兵士だけカラーになっているショット(図2)から、トランペットだけに色彩があるショット(図3)に切り替わる所は、カナタの主観ショットというか、カナタの見ているもののに焦点をあててカラーにしているのかと思ったけど、その後に出てくるカナタがカラーなので、単に視聴者の視線を色彩によって誘導(注視)したのかなと思ったり、と考えを巡らした。その後の女性兵士がさげている鈴もカラーになっているから、やっぱカラーは視線を注視させる役割なのかなと思ったら、アップになった女性兵士がモノクロになり周りだけカラーになっていて(図4)、どういうこっちゃと。色彩で視線を注視させてないじゃん。でも、モノクロだって視線を注視することは可能じゃないかと思ったり、この後のカナタのカラー(図5)と対比させるために、女性兵士はモノクロになったのかなと思ったり。なんかうまく読み取れなかった。

図1

図2

図3

図4(左) 図5(右)



 Bパートでのカナタがトランペットを吹く所が良かった。谷底に落ちたカナタがラッパを吹く。ラッパの音色が空に響き渡る。幼き頃のカナタが出会った女性兵士が言うとおり、そのラッパの音は相手に会いたい気持ち、自分の想いと同じ意味を持つ。音=想いなのだろう。音は必ず響き、自分の想いを相手へと届けてくれる。カナタが吹くラッパの音に呼応して、リオがトランペットを吹き返す。カナタの想いはリオへと届き、それを受け取った。そして、リオはトランペットの音をカナタへと返し、音=想いの交換は成功した。ここら辺のやりとりがこの物語を象徴しているような気がした。つっても第1話目だからまだよくわからんが。音を介在して、自分の想いを相手に届けていくのが第1話では主題の一つになっているように思える。ラストでのカナタが吹いたトランペットの音色が、時告げ砦から街の人々に届くように、音で人々に「何か」というか、「想い」を伝えていくのかな。



 EDは、OPでのKalafinaさんが歌う「光の旋律」や本編の内容とは打って変わり、戸松遥さんが歌う「Girls, Be Ambitious.」にのせて、登場人物たちが元気よく動きまわるのがちょっと驚いたというか、こういうアップテンポな曲も第1121小隊に合ってるなと思った。カナタが走る所とかも好きなんですが、頭の上にフクロウを乗せながらトランペットを吹いているカナタを見て大笑いしているクレハの表情が個人的には一番良いな。笑ってるのを一度止めて、また吹きだすところとか、やけに細かく出来あがっていて、表情が大笑いして崩れているのにもかかわらず、かわいく仕上がってるのがうまいな。



おまけ


 この子一体誰だ? 思わせぶりな登場の仕方なんだけどな。全く説明されないし。気になる。