『ちゅーぶら!!』第6話「カゲキな思春期」と山本寛


 『ちゅーぶら!!』 第6話「カゲキな思春期」で気になった所をメモ(既にtwitterに書いたけど)。


 冒頭の流れる雲、回る風車(?)、Bパート冒頭の流れる雲、回る風車。静止せず、流動する主題。



 Bパート。天原清乃の「だって、生まれた時から女なんですから」と言う言葉が気になり、水野先生が水飲み場の鏡で自分の容姿を見ている所。


 約25秒間の1ショット。最初は前髪やメイクのことを気にして鏡を見ていたが、ウィンクしたり、ポーズをきめていったりと徐々に行動が派手になっていく。天原に触発された水野先生の姿をカットを割らず25秒間を使って、たっぷりと見せる。キャラに細かい芝居をさせていて、肩を払う所とか随分と細部まで描いている。かなり細かい演技をさせているのに、ちょっと驚く。こんなこと今まで『ちゅーぶら!!』でやっていたか? とちょっと気になる。




 Bパート。放課後の下着同好会での場面。ブラのサイズが合ってないと奈由が水野先生の胸をまさぐる所を見て、小町が慌てて数学の参考書を手に取り、顔を真っ赤にしながら見ているさまをバストショットで捉えている。




 約28秒間の1カット。ここまでカットを割らないって、『ちゅーぶら!!』であんまないというか、第6話にして初めてかもしれないなぁと思ってまたまた気になる。隣でおこなわれている奈由たちのオッパイ会話を聞こえないようにと、小町は呪文のように延々と数学の参考書を読み上げる。小町の恥ずかしさがよくあらわれている。徐々にオーバーになっていく様が面白い。下着同好会に男一人はつらい。




 「下着は相手に見てもらわないと意味がない」と言う天原に対して、奈由が「じゃあ、誰か好きな人はいるの?」と聞き返す。二人の会話を切り返しで見せ、天原は顔を赤らめる。窓から入ってきた風によってカーテンがなびく様子を捉えたショットからディゾルヴして、風になびく天原の髪を捉えたショットに切り替わる。風に揺らぐカーテンと風に揺らぐ天原の髪は相似形の構図。一貫として冷静で表情もあまり変化がなかった天原だが、好きな人を聞かれたことによって心が揺らぐ。窓から入ってきたそよ風によって揺らぐカーテンのように、天原の心も揺らいだのだ。視覚的に情動の揺れをあらわす。



 「いないわよ、そんな人」と頬を赤らめながら天原は奈由の問いに答える。その言葉を受けた奈由達(見せたことのない一面を見せた天原にちょっとだけ驚いている)を捉えたバストショットがズームアウトしていき、頬を赤らめる天原のクロースアップショットに切り替わりズームアップしていく。ここで窓(越しの空)を捉えたショット(風は吹いておらずカーテンは揺れていない)、水野先生のクロースアップショットと続く。水野先生はふっと微笑む。水野先生は、自分も葉山圭吾に恋をしているためか天原の心情をすぐに察する。

 遥が持ってきたどら焼きをみんなで食べることに。天原もどら焼きを食べてもいいと言う。内面を少しのぞかせた天原は、みんなと少し打ち解けた模様。ここまでの一連の流れが個人的には結構よかった。天原の心情の推移と天原の見せたことのない一面を見た奈由達が天原を受け入れていく描写がいい。


 だが、ちょっと唐突な印象を受けるシークエンスでもある。しかし、窓越しの「空」の1ショット。オレンジに染まりきらぬ夕暮れのあの「空」の風景によって、見ているものは納得させれられてしまう。1ショットによって天原のすべてが表現されてしまうのだ。


 今まで、自分の内面を表出させなかった天原だったが、好きな人を聞かれ、初めて奈由達の前に自分の内面をあらわす(本人は隠そうとしているが)。下着は自分の体を守るものだと主張する奈由と対立する形で、下着は攻めるものでありデザイン重視だと天原が頑なに主張する裏側には好きな人がいたからだという流れが丹念に描かれている。



 今までとは少し違うなぁと思ってEDを見ていたら、脚本・雨宮ひとみ、コンテ・山本寛、演出・星野真、作画監督・加藤真人と出て、「何! コンテがヤマカンだと!!」とちょっと驚いたわけで。何がヤマカンらしいのかはよくわからないが、今までの『ちゅーぶら!!』ではしてこなかったことをしていた気になった回だったのでメモがてらに書いてみた。TVアニメでコンテを切るって久しぶりに見たかも。それにしても、なぜに『ちゅーぶら!!』でコンテをしているんだろう。 

 注意して見れば他にも気になる所はたくさんあるとは思うんだけど(屋上の合唱練習とか)。弥子に指摘され、天原が下着を脱ぐ所も描写が丁寧だったな(あれはヤマカンの手腕ではないと思うけど)。



おまけ

 鏡の前でポーズを決めていたのを奈由達に見つかって水野先生が驚くところで、ほんの一瞬だけど水野先生の髪が顔になる。どうでもいいことなのかもしれないが。ほんの一瞬だから見逃してしまうかもしれないのに入れてくるのは、芸が細かい。