「愛と赤」の氾濫〜『デュラララ!!』第9話「依依恋恋」〜


 『デュラララ!!』第9話「依依恋恋」で気になったことのメモ。急いで書いたので、あとで書き足すかも。



愛と赤


 『デュラララ!!』第9話「依依恋恋」の首尾、冒頭と結尾は照応しているように思える。Aパートの冒頭。信号機が映し出され、黄信号から赤信号へと信号は変わる。Bパートの結尾。矢霧波江と首に傷のある女の「あなたを愛してる」というヴォイスオーヴァーと共に、赤い色をした満月が捉えられる。赤い色の円環で(信号機の丸と月の丸)で物語は始まり、そして締め括られる。



 物語の始まりと終わりを占拠する「赤」という色彩は、矢霧波江と首に傷のある女の「あなたを愛してる」というヴォイスオーヴァーと共に赤い月が映し出されたことが示すように、偏執的な愛(狂的な愛)の象徴として、「赤」の色彩(または、朱、茜色)は使用されているように思える。


 第9話において、「愛」=「赤」として機能しているのではないのか。




 画面に映し出される赤の色彩を追っていきたいと思う。


 「赤」の色彩でまず目につくのは、矢霧波江が所持している赤い色をした携帯電話。この赤い携帯電話によって矢霧誠二と矢霧波江は連絡を取る。赤い色の携帯電話は、彼女を彼と結びつける役割を果たす。矢霧波江は束縛しないと冒頭に云っていたが、赤い携帯電話は矢霧誠二を少なからずとも束縛する道具だろう。赤い携帯は、鎖のように自分と誠二を繋ぐもの。赤い携帯電話は、矢霧波江の矢霧誠二に対する愛の鎖みたいなものだろう。赤い携帯電話は矢霧波江の矢霧誠二対する「愛」をあらわす。




 幼い頃の矢霧誠二と矢霧波江が畳敷きの部屋でプレゼントを開けるシーン。

 他の人物が登場することなく、二人しか存在しない空間。二人っきりの世界は、「赤」の色彩に占拠されている。夕暮れ時のためなんだとは思うが、世界はあまりにも「赤い」。幼い頃からの矢霧波江の矢霧誠二に対する偏執的な愛をあらわすかのように、赤で覆い尽くされている。この赤は矢霧波江の愛だけでなく、人形に興味を持った(これが後々の誠二の偏執的な愛に繋がってくるだろう)矢霧誠二の愛をもあらわす両義的なものだろう。




 矢霧波江が矢霧誠二を書斎に招き入れ、誠二が初めてセルティの首(頭)を見るシーン。

 矢霧誠二がセルティの頭を見つめているショット。前景のセルティの頭が入った瓶に矢霧誠二の顔が反射される。後景には、夕焼けのためだろうか、窓の外の世界は赤一色になっている。初めてセルティの頭を見つめて、矢霧誠二が抱いた「愛」。それが、後景の「赤」の色彩に示されている。




 矢霧波江と首に傷のある女が身につけているスカートは共に「赤い」(意図的なのか、偶然かは定かではない)。スカートの赤は、双方が持ち合わせている矢霧誠二に対する「愛」の色のためだろうか。ちなみに首に傷のある女の携帯は赤というより、ピンク色に近い。矢霧波江と違って、首に傷のある女の携帯電話の色が赤である必要性はない。波江と誠二は携帯で繋がるが、第9話において彼女は携帯で矢霧誠二とは繋がっていない(別の誰かと連絡している)。




 自分の前に立ちはだかる平和島静雄に、矢霧誠二はボールペンを刺して闘う。平和島静雄の両方の太股に、最初に刺した二本のボールペンは黒と青。矢霧誠二は黒と青と赤の三色のボールペンを使って平和島静雄と闘う。



 最後に残されたボールペンの色は赤。矢霧誠二は、「愛を言葉に置き換えることはできない。だから、行動で示す。彼女を守るため」という旨の事を云い、平和島静雄の手の平に赤いボールペンを刺す。彼にとって、「愛」は行動で示すものであり、その「愛」が平和島静雄の手の平を貫いた「赤い色」のボールペンなのだ。


 愛があらわされる時に使われるのが、「赤」。それは、黒でも青でもない。

 赤の色彩が、愛の象徴としての色として効果的に使用される。




 第9話「依依恋恋」で氾濫する赤の色彩は、登場人物たちの偏執的な愛、一方通行の想いを示すものとして機能しているようにみえる。矢霧波江、矢霧誠二、首に傷のある女、それぞれの相手に送られる過剰とも云える愛。その愛をあらわすのには、色の心理効果で情熱的・激情的な印象を与える赤色は打ってつけなのかもしれない。


 ちなみに、「依依恋恋」とは、恋い慕うあまり離れるに忍びない様子。



赤と青の対比〜おまけ〜


 蛇足。


 矢霧誠二が首に傷のある女に飲み物を買ってくる。矢霧誠二が女に渡す缶ジュースは、赤色。「赤」の色彩は前述した通り、愛の象徴である。矢霧誠二が赤色の缶ジュースを渡すということは、彼女に愛を送っていることを示すだろう。渡さない青色の缶ジュースをみると、青の色彩は愛の象徴とは反対のものかもしれない。



 矢霧誠二がストーカー女を殺した(?)ことを矢霧波江に連絡し、矢霧波江が矢霧誠二の部屋を訪れたシーン。


 カップラーメンを食べている矢霧誠二と誠二に抱きつく矢霧波江が画面中央に配置され、画面右側に赤いソファー、画面左側に青い掛け布団とベッド(今後は青いベッドと書く)が配置されている構図。ちなみに、カーテンの色は青で、チェストは赤。矢霧誠二に抱きついている矢霧波江は赤いソファーがある画面右側に若干寄っている。矢霧誠二は抱きついている矢霧波江が右側に寄っているために画面左の青いベッド側に接している。赤いソファーが矢霧波江であり、青いベッドが矢霧誠二。愛の象徴としての赤いソファー側にいる矢霧波江は誠二に愛を送っているが、赤色(愛の象徴)ではなく青いベッド側にいる矢霧誠二は波江に愛を送ってはいないのだろう。色の差異により、波江の愛と誠二の愛をあらわす。


 赤色は愛であり、青色は愛でも何でもない。




 第9話では、赤と青の対比も見受けられる。