『こばと。』 第21話「・・・春の足音」が面白いとメモ

 気になったことのメモ。




 第21話「・・・春の足音」の季節は、冬から春へと移り変わろうとしている変わり目。冒頭はバレンタインデーの話があり、その後は俊彦達の卒園式が行われたのだから、第21話は2月中旬から3月頃までの話なのだろう。それを踏まえて、雨のシーンを見てみる。


 小鳩は沖浦和斗と話し合おうと事務所の前で彼が出てくるのを待っている。雨が降ってきても、小鳩は沖浦和斗を待ち続ける。雨に打たれながらも待ち続ける小鳩を見兼ねて、沖浦和斗は小鳩の前に現れる。ここで、気になったのは、小鳩達の周りにあらわれる湯気らしきもの。モワモワとした感じがどうみても湯気・蒸気に近い。これは一体何なんだという疑問。湯気らしきものは、地面からわき上がってきているっぽい。太陽光線で暖められた道路によって、湯気が発生したものなのか。夏の雨上がりとかには、よく見る光景なんだけど、雨が降っている最中に起きるものなのかどうか。暖かくなってきた3月頃の話なので、それも関係しているかどうか。

 はっきり言うと、この現象調べてもよくわかんなかった(調べても断言できるものに行きつかなかった)・・・。この後、夜が明けて朝に切り替わるんだけど、そこでは朝霧らしきものが発生している。この湯気と関係しているのだとは思うんだけど・・・。



 どういう現象かはよくわからないんだけど、こういう自然現象を細やかに描写することに素直に驚いた。アニメでこの表現は初めて見た気が(既に誰かがやっているのかもしれないが)。アニメでは偶然映ったものなど存在しなく、すべて意図的なのだから、これをやろうと思ったのが凄いなと思ったり。





 今回は藤本も良かった。



 Bパート。藤本は清花に「沖浦和斗はあなたを守るために泥をかぶっていた」と話す。藤本は、沖浦和斗を許してやってくれ、清花が幸せになるためには沖浦和斗と一緒にならなくてはならないと清花に云う。その時、雨の中を待ち続けて倒れた小鳩を沖浦和斗がよもぎ保育園へと送ってくる。小鳩は自分を介抱してくれていた清花に、「このままでいいんですか? 清花先生、今も沖浦さんを本当に大切に思ってるなら、追い掛けて沖浦さんをギュッとしてください。早く!」と清花に云う。小鳩の言葉を受け、帰ろうとしている沖浦和斗の元へと走っていく清花。その様子を藤本が見ている。このシーンでは、光と影の使われ方が印象的だ。屋外にいる清花と沖浦和斗は、光に包まれ、白の世界(=幸福の世界)にいる。それとは対照的に、保育園の屋内にいる藤本は光に包まれない影の世界にいる。光の世界にいる清花と沖浦和斗は幸福に包まれているが、影の世界にいる藤本は自分の力で清花を幸せにすることが出来ず、清花は沖浦和斗の元へと行ってしまったというどこか虚しい気持でいる。光と影の対比が、藤本の心理的陰影を浮き彫りにする。

 光と影が清花と藤本の現在の心理状態の補強をしている。

 奥行きがあるこの構図が藤本の現在の心情がよくあらわしている。ポツンとしている藤本に寂寥感が滲み出ている。




 清花が沖浦和斗の元へと駆けつける時に鳴り響く「ドォン」という扉の閉められる際に発せられる重苦しい音は、清花が藤本の元へ戻らないことを指し示すだろう。扉の音は、藤本の想いが閉ざされた音。


 清花が沖浦和斗に追い付き、言葉を交わす二人の姿が映し出される。ここでは、清花と沖浦和斗の会話は聞こえず、どんな言葉を交わしているのわからない。言わずもがな、映し出されているのは屋内にいる藤本から見た清花と沖浦の姿であり、藤本のPOVの映像なのだ。沖浦と清花側から捉えられるのではなく、藤本の主観から捉えられている。多分、藤本は清花にほのかな恋心を抱いていたのだろう。しかし、清花を幸せにできるのは自分ではなく、別の男(沖浦)だった。藤本の主観によって捉えられる清花と沖浦の幸福な姿が、藤本の切ない気持ちをよくあらわしてくれる。


 藤本の心情を見事に表現している。


 どこか悲しげな表情の藤本を見て、心配する小鳩も良い。





 あとは、おまけ。


 藤本が清花に「沖浦和斗はあなたを守るために泥をかぶっていた」、「沖浦和斗を許してやってくれ、清花が幸せになるためには沖浦和斗と一緒にならなくてはならない」、「幸せになって欲しい」と云うシークエンス。卒園式が終わった後に園児達が書いたのだろうか、黒板いっぱいに落書きされている。黒板の中央に描かれたハートマークにどうしても目がいってしまう。この印象的なハートマークは、意図的で含みのあるものだろう。園児達がハートマークを描くのはどうも不自然だし(もっと別のものを描くだろう)、描く必然性がない。清花と藤本に合わせて、ハートマークは用意された(スタッフが遊びで書いたのかもしれんが)。


 藤本と清花の会話内容と彼と彼女の間にあるハートマーク(=愛)は連繋しているように思える。



 小鳩が千歳親子からの食事の誘いを断る。今更言う必要もないと思うが、小鳩は食事を一切とらない(そして帽子もとらない)。今までは匂わす程度だったが、今回ははっきりと描写している。現在放送されている作品で、小鳩と同様に食事をとらない(とれない)キャラがいる。『デュラララ!!』のセルティも食事をとらない(とれない)。味覚が存在しないために、うまく料理が作れない描写があるが、小鳩も料理がうまく作れないのだろうか(味覚は存在しているかもしれない)。