『とある科学の超電磁砲』 最終話「Dear My Friends」〜水平と垂直と運動〜

 『とある科学の超電磁砲』第24話「Dear My Friends」について色々と。美琴とテレスティーナの迫力があるド派手なバトルは、かっこ良かった。前話で美琴を助けた時に婚后光子の能力が描写されなかったのは、このラストバトルのためか。



水平と垂直と運動


 『とある科学の超電磁砲』第24話「Dear My Friends」は、おおまかに分けると二つの空間によって構成されている。Aパート、テレスティーナと美琴のド派手なバトルアクションが繰り広げられた「ハイウェイ」。Bパート、春上・枝先救出と美琴とテレスティーナの最終バトルが行われた学園都市・第二十三学区の「研究所」。この二つの空間で第24話は主に展開される。もちろんEDでの事件の後日談など、細部まで見れば、ハイウェイと研究所以外の空間でも物語は展開されているが、大きく分けると、この二つの空間が第24話で主要なものになっているのは違いないと思う(大きく分けるというよりも、二つの空間は第24話において特権化されているといった方が的確なのかもしれないが)。



 では、「ハイウェイ」と「研究所」の二つの空間が何を生み出しているのか。「ハイウェイ」と「研究所」、二つの空間が第24話における重要な要素になっていると私は思う。



 この二つの空間は全く正反対の性質を持っている。それは、「水平(=ハイウェイ)」と「垂直(=研究所)」とそれに伴う運動*1




  Aパートの主な舞台となるのは、「ハイウェイ」。高速で移動する木山が運転する青いランボルギーニの上に乗る美琴とロボット(作業用のロボット? 安全第一とか書いてあるし)を駆るテレスティーナ。高速で移動しながらの疾走感溢れる二人のバトル。派手なバトルアクションが何よりの見所だと思うし、現にこのアクションによって観ている者は興奮を覚える。だが、まるで終わりがないように水平に拡がるハイウェイでの、観ていて爽快なスピード感あふれる美琴とテレスティーナの水平方向の運動によっても、観ている者は少なからずとも興奮を覚えるのではないか。Aパートでのハイウェイの空間は、美琴達が生成する水平方向の攻撃と水平方向の運動によって占められていると云える。水平線で設計されたハイウェイは水平の空間であり、水平運動の空間。ハイウェイの空間が生成した水平が今後どう作用していくのか。



 Aパートで発生した水平方向の運動は、Bパートの垂直方向の運動へと繋がっていく。



 Aパートのハイウェイから舞台は移動し、Bパートの主な舞台となるのは、学園都市・第二十三学区の「研究所」。この研究所の構造は、水平方向に拡がるハイウェイとは逆に、垂直方向に設計された、上下の垂直方向へと拡がる空間。舞台は、水平の空間から垂直の空間へと移動する。横の空間から縦の空間へ。




 Aパートでの、美琴達の運動(水平方向の)は、佐天へと繋がれる。テレスティーナによって仕掛けられたキャパシティダウンによって、美琴達は為す術もなく、テレスティーナに蹂躙される。キャパシティダウンが効かない佐天は、キャパシティダウンを食い止め、美琴達を救うために、中央管制室へと向かう。そこで、彼女は階段を駆けあがる。駆けあがる際に発生する垂直方向の上昇運動(下降もする)。佐天の垂直方向の運動が、美琴達を助けることとなる。美琴の水平方向の運動と佐天によって生成される垂直方向の運動。Aパートでの水平運動とBパートでの垂直運動は呼応し、運動によって物語は躍動する。水平の空間と垂直の空間、水平運動と垂直運動のコントラスト。この水平性と垂直性のコントラストは鮮やか。

 

 運動のカタルシス(水平運動・垂直運動)が観た者を惹きつけている一因となっているのではないか。


 そして、佐天が生成した垂直方向の運動から、また水平方向の運動へと繋がれる。第24話のクライマックスであり、『とある科学の超電磁砲』のクライマックスでもある、美琴とテレスティーナの最終バトル。ここで行われるのは、一直線の軌道を描く美琴のレールガンとテレスティーナのビーム?(どんなものかよくわからない・・・)の衝突=水平運動の衝突。Aパートで見せたような、水平方向の運動が反復される。物語の始まりである第1話でのレールガンも水平運動であったように、物語の終わりである最終話も水平運動が行われ、『とある科学の超電磁砲』の物語の冒頭と結尾は水平運動によって構成されている。

 佐天の垂直運動から美琴の水平運動への回帰、運動の循環によって、絶え間なく画面は運動する。



 登場人物が行う縦と横の絶え間ない運動が、第24話に躍動感を与え、観る者を惹きるつける。




 美琴の水平方向の運動(=横)とは、別のベクトルで行われる佐天の垂直方向の運動(=縦)。美琴の放つレールガンもそうだが、最終話において美琴の水平運動(横の美琴)が多く見受けられる。それに対しての、縦の佐天(垂直方向の上昇・下降運動)。横のベクトルが美琴であり、縦のベクトルが佐天。二人は、それぞれ縦と横という全く別のベクトルにいる。本編のクライマックスで、美琴とは違うベクトル(縦のベクトル)で動く佐天は、美琴とは別の、美琴では出来ないことが佐天には可能だということをあらわしてくれているかのよう。キャパシティダウンで活動が出来ない美琴とは違い、佐天はキャパシティダウンでも活動できる。佐天は美琴の出来ることは出来ないが、美琴が出来ないことが出来る。横と縦の構造によって、美琴(レベル5)と佐天(レベル0)の差異を浮き彫りにしているようにみえる。





 事件の後日談であるEDでは、走る美琴達の水平(運動)から、木山の誕生日のサプライズとして上空を飛行する飛行船を見上げるという垂直(運動)へと繋がれる。





 横と縦の繰り返しは、本編において律動的なリズムを生み出す。連続する運動は、躍動を持続させ、観る者をただただ魅了する。


 水平と垂直とそれに伴う運動によって、第24話は構成されているように思える。第24話において水平運動も垂直運動も単体ではうまく効果を発揮しないであろう、だがAパート・Bパートを通じて行われる運動の連鎖によって機能し、最大の効力を発揮する。そして、視聴者に快楽を感動を与えることができる。


 第24話は観ていて爽快だった。




おまけ


 超電磁砲の二期はあるのだろうか? まず、禁書目録の二期が先か。監督は錦織博さんなのかな。

*1:開放的とか閉鎖的とかもあると思うが