『けいおん!!』とFIXとカメラワーク


 気になったので短めにメモ。


けいおん!!』とFIXとカメラワークの抑制

 既に1期が終わり、2期も中盤に入ってるので、既出のことかもしれないが、『アマガミSS』の感想を書いていて思い付いたのでメモ。『けいおん!!』のFIXに関して。



 前の日記で既に書いていることだが(参照)、『けいおん!!』は主にFIXで構成されており(前に書いたFIX主体・主義)、カメラが動く回数は少ないように思われる。



 そのカメラワークの少なさは、現在放送されている別の作品と比較するとよくわかる(『アマガミSS』の反FIX主義というか、カメラワーク重視。前の日記に書いたとおり平池監督の特性なのかもしれん。先述したとおり『けいおん!!』と『アマガミSS』の対極ぶりからメモすることにした)。もちろん、全編FIXで構成されているわけなんかではなく、ライブシーン・演奏シーンではPANなどするし(動かさないともたないし、雰囲気も出ない)、第5話「お留守番!」(コンテ・演出/石立太一)のジャズ研の楽器が置かれている棚を見せるためのPANや第9話「期末試験!」(コンテ/武本康弘、演出/北之原孝將)ラストや第10話「先生!」(コンテ・演出/高雄統子)の風船の上昇のときのPANUP等々(他にもトラッキングショットとか)、カメラワークは各回随所に存在する(当たり前の話なんだが・・)。



 だが、PANやT.Uをすることを避けているというか、無駄にしないというか、カメラワークを抑制している節がある。これは、各回の演出家の特徴というわけではなく、全編を通して貫かれている方針だと思われる。



 この方針が作り出すものとは何なのかと。



 これらのFIX主体の意図は、落ち着いたというか、静謐さを形成する目的ではなく、被写体の日常をありありと切り取り視聴者に見せつけるための行為なのだろうと思う。画面を止めて軽音部メンバーの芝居(日常的空間)をしっかりと見せていく。『けいおん!!』は彼女たちの過ごす何気ない日々が主題なのであり、FIX主体という選択は自然なものかもしれない。これは私見だけど、レイアウトによほどの自信があるんだなとも思う。




 『けいおん!!』で個人的に面白いと思っている回は、京都での修学旅行の様子が描かれる第4話「修学旅行!」の三好一郎さんのコンテ・演出回(「けいおん」では初の参加回。三好一郎=木上益治。この回は比較的カメラワークが多い、そういえば第6話「梅雨!」の回も多い)と第11話「暑い!」の石立太一さんのコンテ・演出回。


 特に、第11話「暑い!」の石立太一さんのコンテ・演出回が面白いと思っている。なぜ第11話なのかというと、ストーリーもさることながら、カメラワークの抑制が効果的に作用しているからだ。



 第11話「暑い!」の梗概は、軽音部のメンバーが「暑い」と云ってひたすら部室内でだらだらしている回。それしか説明のしようがない回で、トンちゃんのために車に乗ったり、クーラーのために動きまわることもあるが、主たるものは部室での軽音部メンバーの何でもない様子であり、ホントだらだらしている回。



 前の日記でも書いたけど、こういう回が『けいおん』の真骨頂だと思う(彼女たちのごくごく普通のありふれた日常が存分に表れている回だから)。



 この回では、部室内において徹底的なFIXが行われ、部室内でのカメラワークはほぼ皆無であり(PANがある)、頑として部室内で動かさない作りになっている。怖い話の時や部室外の時にはカメラワークはあるのだが。


 カメラワークの抑制というか、排除に近い。ちょっとぐらい動かしてもいいとは思ったりしたけど(T.Uしたり)、徹頭徹尾動かさない。



 部室内で「暑い〜、暑い〜」と云ってグダグダしている彼女たちのごくごく普通というか、何気ない時間をカット割りや印象的な俯瞰からのレイアウト*1(時に監視カメラのような)や持続時間が少し長いショットなどによって、見事に描いている。そして何よりも、FIXが効いていて、FIX主体(カメラワークの抑制)の方針が存分に生かされている。


 FIXによって、彼女たちのダラダラしている日常的空間を切り取ることが十二分に出来ていると感じた。


 カメラを不要に動かさない、的確。そこが素晴らしい。


 第11話は、カメラワークの抑制という方針を体現している回だと思う。



 逆にカメラワークがある所、例えば第13話「残暑見舞い!」(コンテ・演出/内海紘子。夢の時はかなりカメラが動く)のBパート、夏祭りのシーンで、楽しそうにはしゃぐ唯たちへのT.Uや梓のアップショットのT.Bは、印象的に・効果的になるし。第3話「ドラマー!」(コンテ/山田尚子、演出/北之原孝將)Bパート、律の自宅でのシーンでドラムの楽しさを再発見した時から学校までのカメラワークの連続は、今までにないリズムを作る。



 カメラワークの抑制(FIX主体)という選択が『けいおん!』を魅力的にしているように思える。




追記


 これを書いて公開した後に、第8話「進路!」(コンテ・演出/米田光良)を見たら、普通にカメラ動かしてるじゃん(他の作品と比べると頻度は落ちているし、不要に動かしてないと言えば、そうんだろうと思うけど)。貫かれてねぇ。演出家によって違う、うぅ・・・。


 

*1:石立太一さんの回でよく見受けられる