『世紀末オカルト学院』第3話「美し風、吹き抜けて」のメモ

胸と母と文明


 『世紀末オカルト学院』第3話「美し風、吹き抜けて」で目に付くのは、オッパイ。厳密にいうと、オッパイ好きな内田文明のことだが。第3話で文明は女性の胸に惹かれ続ける。Aパート。文明は川島千尋に「頻繁に学長室に行っているのはなぜか」と問いただされ、話を逸らすために川島千尋の髪型を褒める。すると、川島千尋は髪型を褒めてくれたのはあなたが初めて、好きですと云い、キスを迫る。川島のキスを嫌がっていた文明だが、川島の胸元に目が行くと考えが変わり、川島との未来がどうなのか携帯のカメラで撮って調べる(結局、川島との未来はろくなものではないので、文明はその場から去る)。

 川島の胸元を見てすぐさま考えを変えたのを見ると、文明は女性の豊満な胸に弱いらしい(といっても、女性の豊満な胸が好きな男性は相当数いると思われ、別に文明だけに限らず、胸元を見て態度を変えるのは男性にとって自然な反応ともいえなくはない)。



 川島からのアプローチから逃げ、自宅のアパートに帰宅した文明は、TVに映っている少年時代の自分の姿を見る。スプーン曲げを行い、超能力少年と持て囃されている文明(ブンメー)は、水着姿の女性(豊満な胸)に抱きしめられ、女性の胸の中に顔をうずめる(顔を真っ赤にして)。これが契機となって、豊満な胸好きになったのかもしれない。やはり、文明は豊満な胸の女性が好みなのだろう。



 文明は、自分の少年時代を回想する。母親は文明(ブンメー)ではなく、文明(ふみあき)と呼び、文明の好物であるカレーライスを出す。文明は、カレーライスをスプーンを使って喜びながら食べる。母親と少年時代の文明の生活はとても幸せそうだ。少年時代を回想した文明は、あの頃はよかった、帰りたいと漏らす。そして、母親の元へ電話をかけてしまう(母親と少年時代の自分の会話を聞く)。文明が、少年時代に戻りたい、母親との生活に戻りたいと望んでいることがわかる。



 公衆電話を後にした文明は、和洋定食「中村」にふらりと立ち寄る(アパートの大家さんの姉が経営している店)。文明は回想のことを受けてか、カレーライスを注文する。カレーライスを持ってきたのは、中川美風という女性だった。美風を見た文明は、「好みだ・・」と云い、一瞬にして目を奪われる。店のTVでは、超能力少年としての自分が映っており、TVに映っている女性たちは「文明(ブンメー)君」と彼の事を呼ぶ。それを見た文明は、過去のトラウマ(スプーンが曲げられなくなったら皆離れていった)を思い出し、カレーライスをスプーンではなく、箸で食べる。「母さんだけだった。自分のことをブンメーではなく、ふみあきと呼んだのは」と文明が独白すると、美風はブンメーではなくふみあきと文明のことを呼ぶ。文明は、母さん以外でふみあきと初めて呼ばれたと感動し、美風に惚れることになる(何回も店に通うことになる)。



 この一連の流れからわかるように、母親との幸せな生活を再び望んでいた文明は、母親のような女性である美風と出会い、惹かれる。母親が好物のカレーライスを出してくれたように、美風もカレーライスを文明に出し、皆がブンメーと呼ぶところを本当の呼び名であるふみあきと母親のように美風は云う。ブンメーという誤った呼び名でなく、ふみあきという本当の自分を見てくれる人物が美風なのだ(母と同様に)。1999年、母親と幸せな日々を過ごしていた少年文明と同じように、大人文明も母親のような美風と出会い、日々を過ごす。


 母親=美風。文明は過去(=母との生活)に生きようとする(実際過去で生きてるのだが)。


 美風の髪型(色)と母親の髪型は類似しており、視覚的にも母親と美風は類似しているということが示される。美風と対比的なのが、マヤであり、マヤの髪型は黒髪のロングで、文明のことをブンメーと呼ぶ。美風とマヤはまったく正反対な人物として描かれる(造形的にもだが、性格的にも二人は対照的だ)。


 そして、美風は豊満な胸の持ち主でもある(川島と同様に胸元があいている服を着ている)。母親に加えて、胸も豊満というのは文明の好みのドストライクと云えるだろう。美風に惚れるのは、必然的といえるかもしれない。



 ここで気になったことがある。それは、「文明にとって豊満な胸はただの好みであるのだろうか」ということ。


 単純な好みのものでもあると思うが、それと同時に豊満な胸好きには、「母性」というものが繋がってくるのではないか。昔、ナウシカの胸の大きさは母性のあこがれのあらわれではないかという記事を読んだことがある(かなり前のことだったので、どのようなタイトルの本に書かれていたか、記憶が定かではないのだが、このようなことが書かれていたのは確か。ナウシカの胸に至っては、もっと深い理由があるとも思うのだが。ナウシカ以外にも豊満な胸=母性というキャラは結構多いように思える)。それと同様に、この作品にとっての文明の豊満な胸好きは、母性を求めていることのあらわれではないのかと思う。母性=母親を求めているため、文明は豊満な胸が好きなのかもしれない。母性を求めている文明は、豊満な胸を持っている美風に惹かれしまう(何度も美風の胸が文明にあたる)。


 第3話において、豊満な胸が頻出するのは、ただの好みとしての文明の豊満な胸好きをあらわすだけでなく、文明が母を求めていることにも繋がってくるように思える。



 余談だが、マヤは豊満な胸といえるのだろうかと悩む。川島や美風は言いきっていいとすぐにわかるし、成瀬こずえは明らかに胸が無いとわかる。しかし、マヤは微妙な位置にいるため、豊満な胸なのか普通の胸と言い切っていいのか判断に悩む。川島や美風以下というところから、マヤは普通だと判断してもいいと思うのだが、安易かもしれない。



撫でる


 回想にて、文明は母親に頭を撫でられる。Bパート、文明は泣く美風の頭を撫でる。文明は撫でられる者から、撫でる者へと変貌している。母親に撫でられた文明が、母親(=美風)を撫でる。この変化が、少年だった文明と大人になった文明との差異を如実に語る。


おまけ


 美風と車のアンバランスさとそれに振り回される文明も面白かったが、これも面白かった。モロに「おばあちゃんのぽたぽた焼」の絵。このシーンの「テーレッテレーン」もよかった。おやきは何やら意味深だ。