『花咲くいろは』のOP 計算された視線の誘導

第2期OPについて


 とにかく走る。ひたすらに緒花は走り続ける。まるで停止すると死んでしまうんじゃないかと思うくらい、せわしくなく彼女たちは動き回る。時には自転車で、時には電車で、ずっと動き続ける。『花咲くいろは』のテーマの一つが「走る」だということが強烈に印象に残る。


 電車も重要な要素の一つだろう。まっすぐのびる線路の上を走り続ける電車は、『花咲くいろは』と「緒花」のイメージにぴったりのものだ。


 緒花は何事にも突っ走る、全速力で走る。決して止まることなく、白い脚をあらわにしながら、こけそうになっても走り続ける。

 ここまでド直球な作品は珍しい。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいだ。



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 計算された視線の誘導も見事。


 視線の誘導はほぼ全編に渡って行われており、挙げると量が多いので一部分だけ例に挙げる(特にわかりやすいところを)。


 被写体の動き又は位置が類似する二つのショットを繋げて視線を誘導し、とてもスムーズにカットは繋がれている。カットの繋ぎ目が気にならないほど自然に繋がれているので、流れるような美しい映像になっている。見ていて爽快だし、スピ―ディー且つ流麗な出来栄えだ。


 サビ前の部分を例に挙げる。


 民子が厨房で天ぷらを揚げているショット。



 民子が画面右側に向かって振り向くとショットが切り替わり、画面右側へと移動する巴のショットへと繋がる。



 画面右側へと移動する巴と画面中央にて画面左側へと移動する緒花と交差する。



 画面左側へと移動する緒花から、制服姿で駅の階段を下りる緒花と菜子のショットへと繋がれる。



 菜子が画面右側から画面中央へと移動すると、画面中央に仲居姿で料理を運ぶショットへと切り替わる。画面中央には仲居姿の緒花と民子がいる。逆構図のショットへと切り替わる。



 画面中央に位置している緒花が画面手前に迫ってくると、制服姿で画面中央から画面左側へと走る緒花のショットへと切り替わる。



 画面右側に移動し終わると、画面中央に配置された草履のアップショットへと切り替わる。



 緒花が草履を履いて動き出すとショットは切り替わり、画面中央の奥の扉へと走っていくショットになる。



 扉を開けた緒花は画面中央に配置され、緒花は画面左へと移動する。



 画面左側に移動するとショットは切り替わり、画面左側を向いた緒花のバストショットとなる。



 次のショットは画面左側を向いて疾走する緒花が捉えられる。



 上記したように移動する被写体を巧く使用して、よどみなく視線を誘導し、爽快感溢れる映像に仕上げている。まぁ、実際にOPを見た方が手っ取り早いので、改めて見てもらったほうがいいかも。



 あとは、小ネタ。


「空いた穴の向こう側」という歌詞とともに画面右斜め上に木々によって生み出されたぽっかりと空いた白い空が映る。ぽっかりと空いた白い空は女将の心情を表しているかのようだ。



 映像を流れるようにということで、マッチカットももちろん使用し、違和感なくショットを繋げる。電車から降りる緒花のショットから着地する緒花たちのロングショットへと繋げる。見ているものに違和感を感じさせずにショットを繋ぐ。



 他にも細かいところまで計算されて作られいる部分が多くある。色とか。


 計算された見応えのあるOP。本編ももちろん面白い。第16話もよかったです。