『花咲くいろは』第18話「人魚姫と貝殻ブラ」のメモ


 巧く綺麗にまとまった素晴らしい回だった。気合が入っている回だったように思える。岡田麿里さんの脚本もさることながら、篠原俊哉さんのコンテ・演出がとてもよかった(コンテ・演出は本作中初めて)。



 気になったことをメモ。


 細部まで行き届いた描写の数々。ちょっとした描写が作品を豊かにしてくれる。第18話にはそれが多いように思えた。



 街や店のリアルな描写。篠原俊哉さんのサイトによると、金沢までロケハンにいったらしい。現実感溢れる背景描写が物語に説得力を与えている。


 Aパート冒頭。菜子の自宅でのシーン。ここでの細やかな描写が好き。このシーンは、菜子の家族がどういう人物たちかということを説明する事と家での菜子が頼もしい人間だという事(素の自分を出している事)を説明するのが主目的。短めのシーンだが、所々に散りばめられた肌理細やかな描写によって、菜子の家族がどのような人たちなのかをうまく説明している。


 人物説明を言葉でなく映像によって、簡潔に効果的に行うことが出来る人物は優秀な演出家だと僕は思っている。それって意外と出来ていない人が多いように思う。人物説明が巧い方の回は大抵面白い。


 幼児用の椅子が映され、赤ん坊がいることが示される。ぱぱっと手っ取り早く説明する。




 台所の背景描写も現実感が漂うほど細密に設計されている。棚にはZiplocらしきものまで。




 しゃもじをしゃぶる行為。ちょっとした描写でこの赤ちゃんに広がりを与えてくれる。




 縦の構図で前景に菜子と両親、後景に戸の間から見える弟たち。別に後景に弟たちを配置しなくても成立するのだが、あえて戸の間から天ぷらをつまみ食いする弟たちを見せる。こうやって物語を簡潔に効果的にさくさくと語っていく。




 鏡を使った描写。第10話でも見せた篠原俊哉的な見せ方。湯気の所は細かいなと思った。




 重力で雑巾が下に垂れる。こういう細かい描写好きだ。これは菜子の現在の心情にも連繋する。



 菜子が来ると、菜子に背中を向けて新しく買ったスカジャンを見せつける蓮二。思わず笑ってしまった。




 女将に給料アップの真相を聞いた後、菜子は空中クロールをする。空中クロールをして、階段を菜子は昇る。その上昇は、水中から上昇し地上に出ることに繋がる。




 

 岡田麿里的な言い回しも気になった。久しぶりの脚本でもすぐ岡田麿里だとわかるほど特徴的。この方の独特の言語感覚、「きなこもち」だったり、服を一式買った菜子に対しての「豪族」という緒花の一言、「しゃれおつ」だったり、「きもなこち」だったり。普通の脚本家では選択しない言葉をチョイスする。チョイスされた言葉は、ちょっとダサくて、妙に引っかかる。


 それと、「きなこもち」と「いい意味で」のリフレイン。時折、リフレイン使うよなぁと思った。