『たまこまーけっと』と山田尚子監督らしさ


 『MUNTO』に続く、自社オリジナル作品である『たまこまーけっと』。


 第1話「あの娘はかわいいもち屋の娘」は、山田尚子監督らしさが満載の回だった。


 『可愛らしさ』が全編に渡って溢れている。それは『けいおん!』のときよりも、積極的に描かれており、『けいおん!』よりも女子っぽさがアップした感じだ。冒頭の北白川たまこと常盤みどりと牧野かんなの下校シーン。光が当たった地面を飛び越えようとする彼女たちの所作。一人一人のジャンプをする時の手の動きや姿勢や着地など、肌理細やかに作られている。牧野かんなが影の手前で着地してしまう描写も良い。ここでは、『けいおん!!』的芝居(一期ではなく二期の方)が採用されている。『けいおん!!』的芝居っていうのは、僕が勝手に使っている造語なのですが、以前の記事で書いたように、登場人物の可愛らしさを最大限に表現するために、記号的な芝居ではなく人物の所作を最大限リアルに近づけ、本当の女の子の可愛らしさを表現しようとした現実に近い芝居のことを『けいおん!!』的芝居と勝手に言っています。冒頭の三人娘のシーンは、まさに『けいおん!!』的芝居なんだけど、OP以降は、『けいおん!!』的芝居は影をひそめ、たまこの走る芝居などなどアニメ的なオーバーアクションの芝居が続く(『けいおん!!』でもここまでしなかった)。


 『けいおん的!!』芝居とアニメ的な芝居の併用で登場人物はより可愛らしく描かれていく。




 本編中、度々使用されるフレーム内の周りがぼやけ、一部分に焦点が合っているショット。望遠レンズが選択されているのだろうか。印象的に使用されている。ピント送りも頻繁に使用されている。今までの京アニ作品でこんなにしていただろうか?




 OPでのたまことあんこのやりとり(ここが一番好き)を筆頭に、全編に渡ってたまこの芝居はキュート。




 たまこ、みどり、かんなのバッグやバトン入れのストラップなども細かく作られている。皆と違い、かんなのバトン入れはピンク。たまこの携帯ストラップは謎のもち風キャラクター。スマホではなく二つ折り携帯なんですね。電池パックのところにセロハンテープのようなものが貼られている。




 たまこの首筋にはほくろがある。たまこのアップショットの時、やけに目がいく。




 大路もち蔵はピアスをした今時のイケメン高校生っぽいんですが、部屋のインテリアが小学生の男の子の部屋っぽい・・・。青を基調とした部屋にはロボットやら、機関車のおもちゃが(通常の男子高校生は置かない気が・・)。整理整頓されて、オシャレといえば、オシャレなんですが、男子高校生の汚さは微塵もない。山田尚子監督の男の子部屋ってこんなイメージ?




 商店街も花屋の内装も銭湯の内装もカラフル。たまこの自宅の居間の障子までカラフルだ。




 山田尚子監督作品の服装って、全体的に登場人物の服のサイズがちょっと大きくて、手が袖で隠れるほど。ふかふかした感じ。『けいおん!』でもそうだったが、山田尚子監督が考えるキュートな服の感じって、こういうものなんだろう。




 たまことあんこの部屋の小道具は細部まで作りこまれている。ペン立てから椅子まで。カーテンの留め具もオシャレだ。




 EDは、ジャンプカットやカメラのレンズ効果を使用した従来の山田尚子監督らしいものに仕上がっている。OPよりもこっちの方が山田尚子監督らしい。



 山田尚子監督作品に限らず京アニ作品全般に言えることだが(と言っても山田尚子監督作品が特に顕著)、登場人物の台詞や行動だけで、どういう人物かを表現せずに、その人物の服装や身につけている小道具や部屋のインテリアなど、パーソナルな物を細かく描くようにして、その人物の趣味・嗜好や性格を表現していく。映像によって、人物描写を豊かにしていくのが特徴だ。


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 第1話は、好印象だった。次回が楽しみ。それと、山崎たくみさんと鳥って、とりっぴいの印象が強くて、なんか変な感じだ・・・。