『Another』第3話 仄かな不安を煽る構図
『Another』第1話から第3話までを視聴して感じたことを色々と。
『Another』では、繰り返し映されるちょっと不気味な人形や不可解な素振りを見せる同級生や暗めのBGMなど、直接的に視聴者の不安を掻き立てる要素があるけど、それだけでなく、直接的な要素に拍車をかけるような不安定且つ変わった構図でより不安を掻き立てている。
不均衡・不安定な構図は、視聴者に違和感を覚えさせ、そこから不安・緊張を作り出す。
また『Another』では、トリッキーなカット割りをして視聴者の動揺を誘ったりもしている。
第3話「Bone work -骨組-」を例に挙げて。
脚本/檜垣亮、コンテ・演出/ひいろゆきな、作画監督/吉田優子。
Aパート冒頭。見崎鳴が眼帯を外し、榊原恒一に義眼を見せる所では、カメラが平衡感覚を失ったかのように斜めに傾いた状態(ダッチアングル)で鳴と恒一の会話を切り返しで見せる。不安定な構図で見ている者を引きつけ、不安さを植え付ける。ダッチアングルは、ここだけではなく第3話全編に渡って多用される(一階での会話シーンや鳴を追いかけ屋上に行くシーンなど)。
画面の大部分を影で覆われた階段が占拠する変わった構図の1ショット。恒一たちは、画面の右上半分に押しのけられる。人物を正面から捉えるのではなく、特徴的な構図でとらえ、見ていてこれまたどこか引っかかる。影で覆われた無機質なコンクリートの階段が画面を占め、ちょっと不気味だ。
下半身が暗闇に包まれている鳴。画面を覆う暗闇が視聴してている者の不安を煽る。
Aパート。地下から一階へ移動しての、鳴と恒一の会話シーン。ここでは当初、鳴の表情をまともに捉えることはない。後姿や顔下半分や鳴の足(なんだか艶めかしい)を捉えて、鳴の表情を意図的に避ける。しかし、26年前の話になるとクロースアップショットで鳴の顔が画面一杯に映す。表情を映さないで、ここぞという時に表情を映すという効果的な表現の仕方。顔下半分のショット、鳴の足を捉えたショットは、恒一のPOVショット的なものでもあり、鳴の顔を直接見れない恒一の心情をも表している。
画面の余白を使った構図が繰り返して使われる。人物を画面中央に配置せず、ずらして映して画面の余白を生み出す。この不均衡な構図の見せ方が26年前の話を聞き、不安と恐怖を増幅させていく恒一の心情と、視聴者の不安を煽っていく。
鳴を捉えたショットもある。それは26年前に死んだ人物の名前が岬と告げられた時。その時の恒一の驚きと恐怖を表現している。
監視カメラ的な俯瞰ショット。鳴と恒一の会話シーンでは2回使われる(他のシーンでも使われる)。状況説明の意味合いだけでなく、覗き見ているような感覚を強調するショットだ。2回目の俯瞰ショットでは、鳴がいつの間にかにいなくなっているのが示される。
人形を入れたオブジェの足で作られた枠の中にいる恒一。枠の中に視線が誘導される。これまた印象的な構図の1ショット。
Bパート。自宅においての怜子と恒一の会話シーン。最初は酔って上機嫌だった怜子が、26年前の話を尋ねられた途端に顔が曇る。同じ構図(恒一のPOV的な)で反復させ、対比により怜子の心情の変化を顕著に表す。26年前の話が出た瞬間、人形のように動かなくなり虚ろな表情になる怜子が印象的。
Bパート。学校廊下での恒一と鳴の会話シーン。恒一たちを逆光で捉えたロングショット。手前の階段が印象的。この会話の内容は、26年前の話の真相に近づく内容である。第3話では、26年前の当時を示す映像イメージとして、「階段」が使用される。階段という舞台は、26年前の話の象徴のようだ。
この後、ゆかりは階段を転げ落ち死亡するのだが、この階段の1ショットはゆかりの死を暗示しているかのよう。
屋上の柵などの赤錆びは、まるでの柵に付いた血のように見える(OPの金網フェンスにも同じことが云える)。赤色を『Another』では重要な色彩として使用する。鳴の瞳の色に代表されるように。
色と云えば、第3話ラストのゆかりの血はもはや赤色とは言い難く、黒色に近くなっている。黒い血は、闇を連想させる。ゆかりの死からどう物語が展開していくのか気になる。
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おまけ。
紙のしわまで描き込まれている細やかな仕事(一瞬実写かと思ったけど、そうじゃない感じ)。