Phantom〜Requiem for the Phantom〜 最終話「江漣」が面白い


 ラストについて思ったこと。ちょっと急いで書きすぎたかな。


 彼は死に、彼女は新しく生まれた。玲二は死にましたが*1、幸福な結末(言い過ぎかな)だったんじゃないかと僕は感じました。


玲二と江漣


 荷馬車に乗った刺客(?)に玲二が撃たれてしまうわけなんですが、彼は別に撃たれてもよかった、死んでもよかったと僕は思います。なぜなら、玲二は約束を果たすことができたのですから。


 今までの人生で約束を何一つ守れなかった彼が絶対に守ろうとした約束、江漣の本当の笑顔を取り戻すことが彼にはできたのです。ラストに江漣は立ち上がって振り返り、画面の視聴者に、いや玲二に向かって微笑みます。これは玲二に向けられた笑顔。それは、今までの暗殺者として演技をしていた笑顔、偽りの笑顔ではありません。彼女が忘れていた本当の笑顔。振り返ってもそこに玲二は存在しませんが、その本当の笑顔は玲二が取り戻したものです。本当の笑顔を取り戻す約束を果たし、彼は死ぬ。そこには未練も後悔もないでしょう、約束を果たせたのですから。もしかすると、約束を果たしたから彼は死んだのかもしれません。約束を果たさせるために彼は生かされていた。




 逆光で捉えられた玲二が撃たれたショットの次のショットは玲二の微笑みを捉えたクロースアップショット。その今まで見せた事のない優しい笑顔、幸福に包まれた顔は約束を守れたことからくるのかもしれません(玲二は約束を守れたことを知りませんが)。






 「玲二が死んでもよかっただなんて、じゃあ残された江漣はどうなるんだ」ってことになると思いますが、江漣は玲二が居なくなっても、生きていけるでしょう。彼女には、玲二と過ごした「記憶」と彼がくれた「名前」、それに自分の「ルーツ」が残されてますから。

 
 名前のなかった彼女は玲二から「江漣」という名前を与えられ、モンゴルという自分のルーツ、生まれた場所に戻ることができました。「名前」と「起源」の両方を得たことによって、彼女は新しく生まれ変わった。あの晴れ渡った青い空を見上げた時に、存在しているのに存在していない「亡霊」から、「江漣」という実体のある存在に生まれ変わることができたのです。それに加え、「記憶」のない、「歴史」のなかった彼女には、玲二が与えてくれた一緒に過ごした時間=「記憶」が残されています。何一つ、本当に何一つ無かった、持っていなかったアインに、「生まれた場所」、「名前」、「記憶」が与えられて「江漣」という一人の女性になることができました。


 玲二が死んでも、青い花の一輪が欠けても、彼女は生きていける。今までのアインでは生きてはいけなかったと思いますが、「江漣」となった彼女は一人になっても生きていけます。「江漣」という存在を確立し、本当の笑顔を取り戻した彼女。亡霊の「アイン」は死に、一人の人間「江漣」が生まれた。



 彼女が横たわった側には、青い花がある。「記憶」と「名前」=玲二はいつも江漣の側に在り続ける。




 僕にとっては、良いラストでした。他の方はどうなんだろう。感想をまわるかな。っていうか、原作ってこういう終わり方なのかな? 原作通りなのか、アニメオリジナルなのか、どっちなのかしら。




おまけ


 世界は反転する。今までの世界=アインではなく、新しい世界=江漣への転換点。「あたしはアインじゃなくて、もう江蓮なんだぜ」感が出てた。



おまけ2


 この人、前は殺されそうになった時はビビって逃げ回っていたのに。前みたいな小者っぽくなかったなぁ。ラスボスらしくなっていた。



*1:厳密には生死は不明