true tears 眞一郎と乃絵は、恋愛関係ではなく、友情関係(百合)だったについて

改めて最終回を見て、乃絵と眞一郎の関係についてもう一度考えてみました。表面的には、主人公が幼なじみを選んで、結局二人は結ばれなかったという恋愛における三角関係の構図だったと思います。この構図に当てはまる作品にはキミキスがあります。光一は摩央を選び、結美とは結ばれなかったというtrue tearsとまるっきり同じ構図です。しかし、この作品同士が同類になるかというと激しく違う気がします。なぜかというと光一と結美の関係と乃絵と眞一郎の関係は、全く別物の気がするからです。

光一と結美はどうみても恋愛関係でしたが、乃絵と眞一郎は恋愛関係ではない何か別の関係だったのではないでしょうか。

それでは一体なんだったのかというと、乃絵と眞一郎の関係は、友情関係、『百合的友愛関係』だったのではないかと思うのです。それは『シムーン』や『少女革命ウテナ』で示されたような(特にシムーン、もしくは桜庭一樹の小説にでてくる少女達の友情か、少女七竈と七人の可愛そうな大人での少女と少年の関係)、心の奥底で互いに強く繋がりあう濃密な関係、男同士の友情ではなく思春期における少女同士の友愛関係に近い関係が、乃絵と眞一郎だったのではないでしょうか。

彼と彼女の愛は、恋の愛ではなく、友情の愛。

二人はあんなに深く惹かれあっていたのに、強く抱きしめ合ったり、キスさえもしなかった関係性が、どうしてもお互いに触れ合えない神秘性をもつ百合的友愛関係に見えて仕方がないのです。乃絵と眞一郎がお互いに心を揺さぶられる特別な関係だったのにも関わらず、最終的には眞一郎と比呂美が結ばれたのには、乃絵と眞一郎がお互いにあまりにも深い友愛関係を男性と女性ですから恋愛関係だと勘違いしていて、最終的に恋愛関係じゃないことにお互いが気づいた結果だと思うのです。


最後に乃絵が流した涙は、失恋から来る単純な悲しみの涙ではなく、眞一郎が置いた石文字の残骸を見て、あの時の眞一郎を思い出し、眞一郎という自分にとってとても大切な人のことを想い、何の理由もなしに勝手に流れてしまった涙だったと思います。これは、乃絵と眞一郎がただの恋愛関係ではない、別の特別な関係だったことを表しているのではないでしょうか。ここで乃絵と眞一郎が恋愛関係だったとしたら、乃絵は間違いなく失恋の涙を出すでしょう。しかし乃絵は失恋の涙を流さずに、大切な人の事を想い涙を流した。乃絵にとって眞一郎は恋人としてではなく、親友に近い関係だったのでしょう。



乃絵と眞一郎の関係を大体の方は恋愛関係だったと捉えているかと思いますが、私にとっては恋愛でかたずけられる程のものではなく、奥深い、何か特別な関係だったと思えて仕方がないのです。


true tearsがただの恋愛メロドラマだったのではなく、男女間の友情について取り上げた深いテーマを持つ作品だったのではないかと思います。