『ブラック★ロックシューター』第4話 絶望をどうやって映像的に表すのか


 脚本/岡田麿里、コンテ/小林寛、演出/小林寛・今石洋之作画監督/徳田賢朗。



 ヨミが徐々に嫉妬や憎悪に満たされていき、精神を蝕まれていく描写が良かった。前の記事でも書いたけど、ヨミに対して「なんでそんなことで苦しむの? たいしたことじゃないでしょ」と思ったりしてしまうんだけど、中学生のヨミにとっての友人関係は人生を左右するほどの重大なことであって、誰かに必要とされる/されないは死活にかかわるほどの問題なのだだろう(裏世界の影響もあるのかもしれないが)。


 第4話「いつか夢見た世界が閉じる」は全編に渡って空気が重い。どこかずしりとのしかかるような重さがある。それは、物語面の影響もあるとは思うが、視覚的な映像面の影響も大きいように思える。第4話では、晴れ間を見れることはない。青空というものが存在しないのだ。常に空は厚い灰色の雲に覆われて、世界は薄暗い。EDの絵本のような多彩な色彩で形成された世界はそこになく、グレーとブラックでこの世界は作られている。天候は、ずっと曇り。そして、どしゃぶりの雨が降る。第4話はヨミの心情を反映した天候/風景になっている。




 天候の影響もあってか、光を抑制した照明設計になっており、画面は薄暗くなっている。場面に合わせて、特に暗くなっている場面もあり、調理室でのシーンやヨミの自室などがそれにあたる。ヨミの心理的陰影をそのまま表現した照明になっている。




 その灰色の風景が取り除かれる場面もある。マトとカガリ水飲み場のシーン。ここで、カガリがヨミに何かしてあげたいとマトに告げる。雲が取り除かれることはないが、太陽の光で二人は照らされる。それはまさに「光明」というものなのだが、最終的にヨミを苦しめることになってしまうわけで。




 第4話はカット割りも面白い。


 水飲み場でのアラタとタクの会話シーン。カメラは一方からアラタたちを捉えるのではなく、反対側に回り込んで捉えたりと、どこか安定しないカット割りになっている(カメラ位置の変化でアラタとタクの位置関係をちょっと把握しづらいカット割りになっていおり、一瞬混乱してしまう。それに加え不安定な構図も多い)。同じ水飲み場でのマトとカガリの会話シーンの一方からだけ捉える安定的なものとは違う作りになっている。シーンラストのアラタとタクの手が離れるアップショットから、一人佇むタクのロングショットに繋がるイマジナリィライン越えは、彼と彼女の別離を印象的に映す。ちなみにイマジナリィライン越えは、調理室のシーンのヨミの告白部分でもある。




 Bパート、家を訪ねてきたカガリとヨミが玄関先で会話するシーン。自分を必要としてくれるカガリに喜ぶヨミ。当初、彼女たちを同一のフレーム内に収めて同じ空間にいることを示していたのだが、カガリの告白が始まるとヨミとカガリを同一フレーム内に収めることはなくなる。彼女たちが同一フーレム内にいることの忌避は、彼女たちがすぐ近くにいるのにまるで別々の空間、別の場所にいることのように錯覚させる。ヨミとカガリの正面からの切り返しショットはあるものの、二人の空間は切断されている。カット割りによって二人を分離していく。



 それに加え、シーンが進むにつれ玄関外にいるカガリ、玄関内にいるヨミを強調するようなカット割りになっていく。この玄関外にいるカガリを捉えたショットは、画面半分が壁になっており、ヨミとの距離感/別離感を強調する。




 線を引いたように、一歩も家に入ろうとしないカガリは、ヨミとカガリが交わらないことを指し示してくれる。



 カット割りによって、視覚的にヨミとカガリの切り離された関係を強調する。



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 第4話で、気になったことを挙げていく。


 今回からカガリがヨミたちの学校に通うわけで。そこで意外だったのが、カガリの身長。今まで、華奢で小柄な女の子かと思っていたら、マトよりも身長が高かった。今まで車椅子の関係でそう見えていたのだが、立ったらしっかりとした体つき。今までのカガリとは別だということを強調するためなのか。




 面白い見せ方。食パンを咥えて走ったら、案の定咥えたところから食パンがちぎれてしまう。お約束の「食パン+走る」に対しての、「本当はこうなるでしょ」という見せ方。実際は、走る振動でちぎれて食いづらいだけを示した面白い見せ方だなと思った。まぁ、当たり前の話だよなぁ。



 ヨミが学校を休み、アラタとタクが別れ、カガリが家に訪ねてくるところでの分かれ道の描写。


 状況設定するエスタブリッシングショットの役割が主だと思うが、アラタとタクの別れ、ユウからのメールによるマトとヨミの関係の切断を指し示してくれる。別々の道に進んで行ってしまう二人を表した道の描写。



 『アイマス』第20話の時の高雄統子さんを彷彿させる持続時間長めの約32秒間の1ショット。高雄さんの参加回なのかと思ってしまった。ヨミの絶望とカガリが待ち続けていることを表してくれる1ショットだ。




 ユウがあさやけ相談室に訪ねてきて、逃げるようにその場から立ち去るヨミの手首からミサンガがちらっと見えるショット。ヨミの心情を表す細やかな仕事。




 壁に寄り掛かりながら階段を下りるヨミ。頼るもの/寄り掛かるものがなく、壁伝いにし移動できないヨミの現在の心情をあらわす芝居。




 ヨミの表情七変化。どんな顔すんだよって、思わず笑ってしまった。




 過剰なのかもしれないけど、それほど彼女の心は壊れているのだろう。冷静で無表情気味な彼女の表情がここまで変わるのだから。



 面白い回でした。でもいまだに、現実世界と裏世界の繋がりがいまいちよくわからん。説明されていくとは思うんだけど。