『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』最終話「あの夏に咲く花」のメモ

長いかくれんぼの終わり


 泣く、叫ぶ、走る。感情が大爆発するエモーショナル回。


 登場人物たちは、顔をくしゃくしゃにして涙を流し、大声で叫び、ひたすら走り回る。そして、今まで抑えていた自分の想いを吐き出し、剥き出しの自分をさらけ出す。




 ド直球の内容だった。




 長いかくれんぼが終わる。「超平和バスターズ」のメンバーの絆が再生されていくにつれ、めんまはじんたんの目に映らなくなっていった。めんまはじんたんに「かくれんぼだよ」と云い、めんまとじんたんたちのかくれんぼが始まる。



 「かくれんぼ」はすでに始まっていたのだ。めんまがいなくなったあの日からじんたんたちは隠れためんまをずっと探してた。ゆきあつもつるこもぽっぽもあなるもみんなめんまを探していた。あの日みんなの前からいなくなった「めんま」のことを。


 じんたんだけでなく、ずっとみんなの心の奥にめんまがいた。抱え込んでいた。みんな成長したけど、時は流れたけど、みんなあの日で停まっていた。動き出せなかった。


 決して鬼が見つかることのないかくれんぼをじんたんたちはしていたのだ



 じんたんたちは、叫びながら、涙を流しながら、泥だらけになりながら、傷だらけになりながらめんまを探す。見つからないと思いかけた瞬間、朝日に照らされた一本の木の根元に手紙を見つける。


 手紙によって届けられためんまの想い。あの日言えなかった想いを伝えることができた。みんなめんまからの想いを受け取り、涙をぼろぼろと流す。




 かくれんぼは鬼を見つけないと終われない。手紙を届け想いを伝えても、長いかくれんぼは終わらないのだ。じんたんたちは「もういいかい」と叫び続ける。


「もういいよ」


 めんまの声がじんたんだけでなく、ゆきあつにもぽっぽにもあなるにもつるこにも届き、みんなの目にめんまが映るようになる。



 手紙で大好きとみんなに伝えためんまに対して、じんたんたちも「大好き」と大声で返す。ずっと交換できなかった想いを今やっと交換できた。


 じんたんが泣き、みんなと別れを告げられた。めんまは果たすことができたのだ。


 「もういいよ」は悩み続けてきたじんたんたちに対して、許しの言葉にも聞こえる。



 めんまは「ちゃんと言って」と云う。ずっと終われなった長いかくれんぼを終わらす言葉を。新しく歩み始めるために、みんなが後ろを向いて歩かないように前をちゃんと見て歩いて行けるように、「めんま、見つけた」という言葉を。




めんま、見つけた」と云い、長いかくれんぼが終わる。めんまを探し続けてきたじんたんたちは、やっと見つけることができた。




 じんたんたちは大人になっていく。めんまを見つけ、「超平和バスターズ」は新しい道を一緒に歩んでいく。



 「かくれんぼ」を使い、物語をドラマティックに仕上げるのはうまいなぁと思った。


おまけ

・前々から思っていたが、「涙を流すこと」が最近の作品に多いような気がした。いろはでは、ほぼ毎回緒花は涙を流す。嬉しかったり、悲しかったり。まどかでも、多く涙を流す。その涙の積み重ねは、最後にとても感動的に映る。


・ラストで出てくるじんたん父の写真を見ると、じんたんが子供のころ(母が生きていたころ)はまだ髪があったようだ。単純に年のせいもあると思うが、母が死にじんたんが学校に行かなくなり、そのことで髪が抜け始めたのだろうか。


・青空と涙が印象的な作品だった。それと橋と照明も。実在の商品やゲーム、流行語などが作中に登場し現実と地続きだということをアピールするかのような表現も印象的だった。

 
 とても良い作品でした。