『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』 あまりにもかっこよすぎる少女たち


 第11話「決意」

 脚本/浦畑達彦、コンテ/北條史也セトウケンジ、演出/中川淳。



 熱い、熱すぎる。燃えた。


 「痛快」という一言に尽きる回。


 もう負けることはわかっている。宮永照の圧倒的な、絶対的な強さにはまったく歯が立たない。足もとにも及ばないほどの力量差。ここで奇跡なんてものが生じるわけもなく、何をどうこうしても勝ち目はない。


 勝つことは100%不可能だ。宮永照に勝てるという幻想をもっているほど、彼女たちは愚かではなく、自分の力量と相手の力量を見定められる力を彼女たちはちゃんと持っている。


 その時、彼女たちはどうするのか? 負け戦だとわかっている勝負で、どういう答えを出すのか? どうやっても敵わないのだから、立ち向かうのをやめて、被害を最小限にするのか。それとも、ただ呆然と相手のなすがままになるのか。



 そう、彼女たちは決意するのだ、立ち向かうことを、諦めないことを。



 負けることはわかっていても、勝負の行方は見えていても、どんなに巨大な相手だろうと、彼女たちの心は決して折れない。どこまでもまっすぐに突き進む。

 それは自分のためももちろんあるが、それだけでなく、周りの人間、チームメイトのために戦う。



 その姿は、あまりにもかっこいい。



 花田煌は、2回戦で宮永照に惨敗した。今も、宮永照にこてんぱんにされている。それでも彼女は、立ち向かうことを選択する。この対戦中、花田の諦めた描写は一切ない。

 はっきりいって花田は、エースの実力もなく、周りの全国クラスの選手に比べて見劣りする。

 それに加えて、彼女が先鋒に選ばれたのは捨て駒という理由から。

 花田は自分が捨て駒ということを知っている。


 なぜ、彼女は諦めないのか? 勝てる実力もなく、チームからは捨て駒として見られている。

 普通なら、心が折れてしまう。でも彼女の心は決して折れず、ヒビすら入らない。彼女は云う、自分は必要とされている、他人から必要とされていると。彼女は他人のために戦う。自分を必要としてくれている人のために。


 花田煌は弱い。弱いけど、強い。その心は、誰よりも強い。


 『捨て駒、任されました!!』




 そして、誰よりも美しい。すばらっです。



 花田煌と同じく、立ち向かうことを諦めない少女がもう一人、園城寺怜。


 園城寺怜は一巡先を見る能力を使用しすぎて、心身ともにぼろぼろだ。対局を続けるのもやっとの状態。でも、彼女は打ち続ける。何のために? そこまでして何のために打つ? それは、自分を今まで支えてきてくれた人のため、千里山女子のみんなのため、自分を応援してくれる人のために彼女は打ち続ける。


 皆のために自分がどうなってもかまわない、打ち続ける、宮永照に立ち向かい続けるというその決意。決して揺るぐことのない決意。これを決意と言わずに何を決意という云う。かっこいい。


 彼女はありったけの力を使い、二巡目の先、三巡目を見ようとする。額が光る描写には思わず笑ってしまったが(三つ目の目?)、ED曲の流れるタイミングと画面が割れる描写が最高にかっこよく、見ている者は誰もが興奮する。




 花田煌と園城寺怜と対比的に描写されるのは、松実玄だ。彼女は終始、おろおろし、宮永照のなすがままにされる。宮永に一矢報いるために二人が戦う中、彼女は目に涙を浮かべ、焦燥する。彼女がいるために、二人が引き立っているわけだが、それでいいのか。決意なき者がどうなるのか。挑まなくていいのか、立ち向かはなくていいのか、と見ててやきもきしてしまった。第12話で活躍することを期待。


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 麻雀全国大会Aブロック準決勝すごく面白い。カットのリズムの良さ、かっこよさと気持ちよさを兼ね備えた速さ。外連味たっぷりの見せ方、静と動の強弱のつけ方など。どれも素晴らしいです。


 第11話で、すごく好きな描写を挙げる。Bパートラスト、園城寺怜がチームメイトとの日々を回顧し、怜が麻雀卓を手でぎゅっと掴むショット、ずっと俯いていた彼女が顔(目)を上げるクロースアップショットと続き、園城寺怜の後ろ姿を仰角で捉えたショットと繋がれる。この一連の流れによって、彼女の強い決意が映像によって語られる。

 麻雀卓を掴み、顔を上げ、照明を浴びて仰角から捉えられたときの園城寺怜の後ろ姿の力強さ。簡潔に、効果的に彼女の復活を映像で見せていく。




 本当に面白い。次回も見逃せないです。それと、怜の冷たい目もよかった。