涼宮ハルヒの憂鬱 第8話 「笹の葉ラプソディ」が面白い
コンテ・演出、武本康弘。
アバンタイトル
お互いの会話を切り返しで見せていくのではなく、キョンのPOVショットを織り交ぜながら会話は進行していく。
キョンの「始まったな」という台詞と共に「涼宮ハルヒの憂鬱」のタイトルが出される。「始まったな」の意味通りに新シリーズが始まる。このように登場人物の台詞と映像がシンクロしていることが、このあと度々ある。
「笹の葉ラプソディ」を一話で納めようとしているせいか、全体的にかなりスピーディーに物語が展開していく。
Aパート
キョンが部室を訪れる所では、新シリーズを意識しているのかどうか定かではないが*1、さりげなく人物紹介をしている。まず、部室の状況設定ショット、お茶を運んでくる朝比奈、チェスをやろうと誘う古泉、窓際で本を読む長門の順にSOS団のメンバーが取り上げられて、各々がどういう人物なのか短い間ながら明瞭に伝えている。
短冊を書き、竹に吊るす所では、テンポの早いBGMと余分な「間」を削ぎ取って、あっという間に処理していく。しかし、テンポの早いBGMが終わり、ハルヒが空を見上げるように窓へ振り向くのと同時に、キョンが溜息を吐くのを契機としてとがらりとテンポが変化し、ゆっくりとしたものになる。
ハルヒの「16年か、長いなぁ」の言葉を聞き、ハルヒを見上げるキョン。ここでは、窓の入射光を強調し、陰影をはっきり濃くして、ダッチ・アングル(画面を水平ではなく斜めにする。これにより必然的に視聴者の注意を画面に向かわせられる。)でハルヒを見せていく。物悲しげなピアノのBGMも流れ、映像的にも音響的にも視聴者の注意をハルヒに釘付けにしている。その後のあっけにとられたキョンが映し出され、これが並々ならぬことだということが伝えられている。
前半にテンポを早く、視聴者の注意を引かせたい所では一転、テンポを遅くして緩急をうまく使いこなしおり、ハルヒの七夕の憂鬱をうまく演出している。
・朝比奈に過去に一緒に来て欲しいと言われ、3年前に行くキョン。
ごしショットと切り返しで会話は進む。部室から過去に飛ぶ場面では、キョンのPOVショットからフォーカス・アウトしていき画面が暗転、目を模った形からフォーカス・インしていく。オーソドックスだが、効果的な場面展開。
公園の場面では、ベンチにいる二人をフル・ショットで捉えた構図がある。これが後々になって意味を持ってくる。
Bパート
ハルヒはキョンの顔を見ていないという事で、必然的に二人の距離は離れていることになる。なのでここでは、キョンとハルヒが一定以上の距離を保って展開していく。
画面右上にハルヒ、画面左下にキョンという配置になっている。階段で話している構図になので、手前にキョン、奥にハルヒ、となっているのだがなぜだか二人の遠近感が乏しくなっている。それにより、画面右上にハルヒ、画面左下にキョンという構図が強調されている。画面右は上手(上位)、画面左は下手(下位)という視覚効果があり、尚且つ上部にハルヒ、下部にキョンがいるため、ハルヒが強気で上目線という事が視覚的にわかりやすくなっている。*2前述した通り、ハルヒがキョンの顔を見ていない設定なので、距離を保たなければならない。階段のシーンでは、この二人の微妙に離れた距離が、お互いの親密度を視覚的にも表しており、見知らぬキョンに対しての警戒心や不信感なども表している。
ドアを開けるとそこに長門がいるのだが、急に画面中央に長門の顔がでかでかと映し出されるのでインパクトがとても強い。それに加え、早い切り返しで長門の顔が映し出されるので、これまた強い印象を与えている。
長門の部屋の場面では、フル・ショットでシンメトリーのように均整のとれた人物配置のショット(右に長門、テーブルを挟んで左にキョンと朝比奈)が長門を象徴するようなものになっている。長門の無機質さを構図でよく表現している。
・布団に入り現代に戻ったキョンと朝比奈。
度々、長門のクロースアップショットがあるが、いまいち真意が読み取れず、保留。
ローアングルで前景に長門の大きくうつった脚、後景に長門の脚の隙間から見える朝比奈と隣にいるキョンのショットでは、キョンの「無敵じゃないか」という台詞の意味通り、大きくうつった脚が長門の底知れぬ力の強さをうまく表現している。
部屋を出るときは床に3人の靴がないショット、部屋に入るときは3人の靴が映ったショット*3、さりげなく状況説明がなされている。
・長門の部屋を出て、ベンチに座っている場面。
ベンチに座る二人、これに似た構図が前にもあったように感じる。そこで、3年前での公園での場面をふっと思い出す。場所は違うが、この似ている構図は3年前と現代を象徴する構図だと思う。場所は違うが、3年前の公園と似た構図を使うことによって、朝比奈達が3年前から現代へと帰還したことを暗に視聴者に伝えている。
・現代に帰還し、部室で古泉とチェスをするキョンの場面。
実写では撮りづらいと思われるチェスの盤面から仰角でキョン達を捉えていく。かなりインパクトが強い。この強烈に印象付けたチェスという小道具をうまく使って、ストーリーは進行する。ラストにキョンがクイーンをデコピンして、左にピントのあってない団長と書かれた四角錐があるのは、意味を理解するのにとても丁寧でわかりやすい。
久しぶりの新作。そこまで変わったことはしていないが、うまく話をまとめていて見やすかった。
追記
これは、数日前に書いたのを書きなおしたもの。