ドラえもん誕生日スペシャル「ドラえもんの長い一日」がすごく面白い


 コンテ・演出、高橋渉





 素晴らしい。やっぱ、高橋渉さんはすごい。こういうのを神回と呼ぶのだろう。圧倒された一時間だった。


 冒頭、不気味なカラスが映し出される。この時点で、不吉なことがこれから起きるのだろうと視聴者は感じる。それと同時に、ここがどこなのかわからない。描写されない。現在か、それとも未来なのか。そのあと、これは未来の世界だと提示されるのだが、場所を設定されないため妙な不安感を同時に味わうことになる。この短い冒頭で僕はすぐに引きこまれた。


 デンジャのボディの「赤」とドラえもんの鼻の「赤」。「赤」のイメージでショットを繋ぐ所は良かった。同じ「赤」のイメージで繋がれることによって見知らぬ彼らは繋がり、その後身体を交換することになるのだ。


 デンジャがバズーカ(ビーム砲?)をぶっ放す描写や、炎の中をたたずむ描写とか、どこのロボットアニメですか? っていうぐらい迫力があった。


 自分の顔(ドラえもん)を描いた袋を被りながらのゴミ置き場での場面もいい。ドラえもんの心情を表現するために、わざと袋を脱がない。ドラえもんの顔が描かれた袋を被ることによって、デンジャの身体に宿っているドラえもんを強調させる。


 デンジャ(入れ替わった後)がのび太の部屋でタケコプターを使用するのにはしびれた。タケコプターの風圧により、部屋にあるものが大きく揺れる(カーテンなど)。別に部屋を出て屋根で使用してもよかった。そうではなく、のび太の部屋の中でタケコプターを使用する。あの風圧でかき乱される部屋は、デンジャーのかき乱される心情そのものなのだ。彼の心情がうまく表現されている。

 
 デンジャが改造した空気砲3倍バージョン(勝手に命名。確か3倍だったような)がかっこよすぎる。すごい威力だ。その前の空気砲2丁拳銃もこれまたかっこよかった。アクションが素晴らしいのも見逃せない。


 ギャグもすごく笑える。あれほど恐ろしかったデンジャの中身がドラえもんになることであそこまでコミカルになるとは。喋れないデカイ身体が作り出すあの滑稽さは素晴らしい。


 のび太ドラえもんに気づく所は、素直に感動する。下手な描写をまったく入れないことが功を奏している。余計なものがない。


 ラストで、デンジャは涙を流す、何も言葉を発さず。喋れないという設定が最後の最後まで響いてくるとは。


 そうなのだ。この回には無駄なものが一切ない。完璧に近い。デンジャが犬を避けて事故を起こすことで、その後彼が改心していくのに違和感なく接することができるし、赤いビー玉は最後まで意味を持ってくる。


 全てが意味を持っている。久しぶりに衝撃を受けた。



 あと、ドラミちゃんが最高にいいね。彼女の台詞が時々暗喩になっている。彼女が居ると居ないとでは全然違うな。
 

 
 他にもいっぱい見所があった。とても面白かったです。